脊髄損傷になると痙性(ケイセイ)と呼ばれる自分の意識とは無関係な体のケイレンが現れる事があります。
痙性の強さには個人差があり、痙性が強すぎる場合は日常生活で支障を来す事も・・・
今回はそもそも痙性とは何か。痙性って良いもの?悪いのもの?などを踏まえ、痙性の上手な使い方を説明していきます。
そもそも脊髄損傷とは何か知りたい方はこちら
脊髄損傷とは?わかりやすく説明します
目次
・痙性とは何か?メカニズムについて解説【完全損傷と不完全損傷】
・痙性に使われる薬と対処方法
・脊髄損傷の痙性には運動が効果的な理由
・痙性は抑制するのも?痙性は役に立つ
この記事は、理学療法士やアスレチックトレーナーとして脊髄損傷のリハビリ、トレーニング経験を多く持つ、障害者専門のパーソナルトレーナーが書いています。
痙性とは何か?メカニズムについて解説【完全損傷と不完全損傷】
痙性とはズバリ「自分の意思とは関係ない身体のケイレン現象」です。
詳しく説明していきます。
脊髄の神経には主に2つの役割があり、1つは脳からの命令を手足に伝える役割、2つ目は手足からの感覚(例えば痛い、熱いなど)を脳に伝える役割があります。この他にも様々なやり取りを脳と手足で行われおり、それを伝える役割を脊髄の神経が担っています。
いわゆる「報連相」ですね。
報連相が上手くいけば仕事もスムーズに進みますが、報連相が少ないとどこかでエラーが生じますよね。
神経もそれと同じで脊髄が傷つくと、脳と手足の報連相が不足しエラーを起こしてしまいます。
その結果、痙性として体が反応を起こします。
痙性にはいくつかパターンがあり、「小刻みに震える」「勢いよく手足が曲がる」「手足が突っ張って伸びる」などの反応が特徴です。
痙性は脊髄損傷になったら必ずしも現れる訳ではありません。その違いは簡単に「完全損傷」と「不完全損傷」に分ける事ができます。
完全損傷とは
脊髄の神経が完全に切れ、脳と手足の情報伝達が行えない状態を示します。この場合、多くは弛緩性麻痺と言って、損傷部分から下の身体がダランとしビクとも反応せず、痙性もでない事が多いです。報連相を行う連絡網が完全に遮断されている為、エラーすら起きないと言った感じです。
不完全損傷とは
脳と手足をつなぐ神経の一部が残されている為、情報のやり取りは可能ですが報連相がスムーズでない、情報が正しくないことでエラーが生じ痙性として体が反応してしまいます。
痙性がでる場面は、手足への刺激(痛い、熱い、皮膚の刺激)や筋肉が伸ばされることで痙性が出現します。
時間が経過しリハビリやトレーニングなどで完全損傷でも痙性が出現する人もいます。
いま痙性が出ないからこの際も出ないという事ではありません。
痙性に使われる薬と対処方法
ここでは代表的な痙性としびれの治療に使われる薬の紹介と運動による痛みの改善について説明します。
- リオレサール ギャバロン (バクロフェン)
【神経伝達を抑え筋肉のこわばりを軽減】 - ダントリウムカプセル
【筋肉の収縮を抑え、筋肉のこわばりや麻痺を改善】 - ミオナール
【血管を広げて筋血流を増やし、こわばりなどの筋緊張にともなう症状を改善】 - テルネリン
【過剰な中枢神経の伝達を抑え、筋肉の緊張を抑制】 - セルシン (ジアゼパム)
【不安や緊張などをしずめたり、筋肉の痙攣症状を改善】
- リリカカプセル (プレガバリン)
【過剰に興奮した神経を鎮め、痛みを和らげる】 - ユベラカプセル (トコフェロール ニコチン酸エステル)
【血液の流れを改善しコレステロールなどを低下させ、高血圧症などを改善】 - メチコバール (メコバラミン)
【タンパク質の合成を促し傷ついた末梢神経を修復、しびれ、痛みなどを改善】
痙性やしびれが強すぎると生活の邪魔になったり、寝れない事がありますよね。痙性やしびれの薬は様々で、人によって使っているものが違い、多くの方は色々と試して、自分の体に合ったものを選択しています。
ですので、医師から処方されたのもでイマイチ効果が見られない時は、薬を変更してみるのも手です。
薬以外の対処法として有酸素運動で痛みが軽減できる事がわかっています。
研究によると脊髄損傷者に対しての有酸素運動は痛みを感じる脳の一部が変化して痛みの緩和につながると言われてるんです!
詳しくはこちらの記事をご参考にしてみてください。
脊髄損傷の痙性には運動が効果的な理由
ズバリ痙性には運動が効果的と言えます!
これからその理由を説明するのですが、効果的と言っても「痙性を弱めたり、抑制したり」という意味ではありません。
言うならば痙性と上手に付き合っていこうよ!と言った感じです。
痙性は自分の身体を理解してあげる事で、いつ出るのか、どうやったら抑えられるのかが段々とわかってきます。
それには、たくさんの経験が必要で消極的な運動ばかりでは自分の体を理解する事は出来ません。
研究でも推奨されている積極的な運動によって、痙性を出す、使ってあげる事で、自分の痙性のパターンを理解しコントロールができるようになります。
ですので、痙性には運動がとても効果的なんです。まずはどんどん動いて痙性を出してあげること、そして痙性とうまく付き合って行く事が大切!
また痙性のメリットデメリットを理解しておく事も大切です。
痙性は抑制するもの?痙性は役に立つ
痙性は上手く使ってあげる事で、日常生活やトレーニングの役にたちます。
例えば、トランスファーの時に体幹の痙性や足の痙性を上手く利用する事で手助けしてくれ、実際にトランスの時に痙性を使う事で立ちながら、乗り移りできる方もいますよ。
実際に痙性を使ったトレーニングの例を見ていただきましょう。
動画はトレーニングでは膝の痙性をうまく利用して立位を保持している場面です。
49秒~52秒あたりを参照ください。
このように私は多くの脊髄損傷者とのリハビリ、トレーニングを通じて痙性はうまくコントロールしてあげれば、リハビリやトレーニングの役に立つことがわかりました。
まとめ
痙性と仲良くしよう!
痙性は強すぎる場合、日常生活で寝れない、痺れる、トランスファーの邪魔になるなどデメリットもあります。
しかしメリットも沢山あり、そんな痙性も使い方がわかれば仲良くできるかもしれません。
痙性のパターンは一人ひとり違うため、自分の痙性のパターンを知り上手く付き合って痙性を自由に使えるようになりましょう。