【障害者の悩み】便秘解消に効く腸活運動

便秘は障害者や車椅子ユーザーの悩みで非常に多く、生活にも直結する重要な問題ですが、立てる、歩ける、車椅子など障害の程度に関わらず起こりえます。
そこで今回は障害者の中でも「少しでも立てる、歩ける方」向けに便秘を解消する為の腸活運動を紹介します。

これまで便秘の解消法として食事を意識してきたが、なかなか改善しなかったという方は当記事を参考にしてみてください。

 

目次

・便秘の種類「弛緩性便秘」「緊張性便秘」「直腸性便秘」
・便秘解消!4つの腸活運動
・まとめ

この記事は、理学療法士やアスレチックトレーナーとして障害者、車椅子ユーザーのリハビリ、トレーニング経験を多く持つ、障害者専門のパーソナルトレーナーが書いています。

便秘の種類「弛緩性便秘」「緊張性便秘」「直腸性便秘」

健常者でも便秘の原因は一人一人違いがあるように、脊髄損傷、脳卒中、脳性麻痺など障害の種類によって便秘になる原因が異なってきますが、大きく分けて以下の3つのタイプに分類する事ができます。

 

3つの便秘の種類

【弛緩性便秘】
腸の動き(蠕動運動)が低下している状態で、便を肛門近くまで運搬する事ができなくなります。主な原因は腹筋の筋力低下や運動不足、腸のたるみ、血行不良などになります。
障害者の場合は腹筋の筋力低下や運動不足が原因の可能性が高いです

 

緊張性便秘】
副交感神経が常に緊張した状態になる事で便の通り道を塞ぎ便通が悪くなります。
原因はストレスや睡眠不足、不規則な生活によって自律神経のバランスが崩れている場合に起こり、また下剤を多用する事で腸の活動が活発化しすぎることも原因となります。
常に下剤を使って排便している方は腸が緊張状態にある可能性があります。

 

直腸性便秘】
通常、直腸まで便が降りてきたら、脳に排便を促すサインが送られます。しかし、直腸性便秘では便が降りてきたサインを脳に伝える事ができず、排便反応が起こりにくくなります。
このタイプは「習慣性便秘」とも言われ、排便を習慣化(時間を決める)する事で排便サイクルが作られ徐々に改善される事があります。

 

この様に障害による後遺症(神経麻痺や排便機能の低下)から便秘となる場合が多いのですが、このようなタイプの便秘解消には適度な運動が有効とされています。

それでは、おすすめの腸活運動を紹介していきます。

便秘解消!4つの腸活運動

便秘は障害による神経麻痺の影響もありますが、それ以外に「腸」がしっかりと働く準備ができていない場合もあります。

その為、以下の4つの運動で腸が働く準備を整えましょう。

 

腹部の柔軟性UPで腸活

まず画像中心の基本姿勢(骨盤を立て、背中を伸ばした状態)で座ります。
基本姿勢で息を吸い、そこから息をゆっくりと吐きながら画像のように4つの運動を行なっていきます。
まずはこのウォーミングアップでリラックスしながら呼吸と体を動かす準備を行いましょう。

*目安4つの運動を1〜2サイクル繰り返します。

 

②呼吸と骨盤運動で下腹部をスッキリさせよう

椅子や車椅子に浅く腰掛け、左右の骨盤に手をあて前後に倒していきます。
骨盤を前に倒す時は息を吸いながら背中を伸ばし、骨盤を後ろに倒すときは下腹部を凹ませるように息を吐き背中を丸めます。
骨盤周囲の力だけで動かせない場合は、左右の骨盤に当てた手で前後への動きをサポートしながら行なってください。

*目安は3秒吸って、5秒吐く動作を10回繰り返します。

 

腹筋、臀筋を鍛えて腹圧UP

仰向けに寝た状態で腹筋とブリッジを行います。
腹筋は体が上がらなくても膝を触りに行く様にお腹を使っている事を意識できていれば大丈夫です。
ブリッジは首や背中に力を入れすぎず、踵で地面を押しながらお尻ともも裏を使って行います。

腹筋が弱く腹圧によって便を押し出す事が出来ない場合はこの運動で排便時の腹圧を上げる効果が期待できます。

*目安は10回×2〜3セット

 

四つ這いで腸活

ヨガの運動としても有名な「キャッツ&ドッグ」の動きです。
腰を反るドッグの動きでは息を大きく吸い、顔を上げて正面をみます。
次に息を吐きながら両手で床を押し、背中を丸める動き(キャッツ)を繰り返します。
キャッツの時は背骨の丸まりと下腹部の力を使って骨盤を引き上げる事が重要です。

*目安は左右10回2〜3セット

 

【おまけ】レベルアップ腸活運動

障害が軽度で運動負荷が物足りないという方向けにレベルアップ腸活運動をご紹介します。
基本的な呼吸や下腹部への意識は同様に行います。

【画像左】
座り込み動作では足肩幅より広めに開き、真っ直ぐ骨盤を起こした姿勢からゆっくりと腰を降ろしていき、この姿勢を保ちます。
*目安は3分程度

【画像中央】
膝立ち姿勢から片方の足を前に出し、一方の足を後ろに伸ばした姿勢を保ちます。
後ろ足側の股関節を下に押し込み、腹部と股関節をストレッチしていきます。
*目安は片方1〜2分程度

【画像右】
両足を大きく開いた姿勢から、片方の手で足首を触りにいきます。もう一方の手は天井に伸ばし、上半身を天井に向けた手の方に捻っていきます。
*目安は片側10秒を3セット程度

*これらの動作はレベルが高く転倒などの危険もある為、ご自身の身体機能に合わせて実施してください。

まとめ

【障害者向けの腸活ポイント】

  • 下腹部を潰して腸の活動を低下させてしまう「猫背」を改善させる。
  • 腹筋や腹圧を鍛える事で便を押し出す力をつける。
  • 呼吸を意識する事で、お腹周りのインナーマッスルを活発化させる。
  • お腹や股関節周囲の柔軟性をUPさせる事で、腸の動くスペースを作る。

車椅子生活でなくても障害の後遺症によって活動量は低下している場合が多いです。特にお腹周りや股関節周囲は意識的に動かさなければ、柔軟性が低下しやすく腸の働きに影響を与えます。
今回ご紹介した4つの腸活運動は腸の動きを改善するだけでなく、姿勢の改善や筋力UP、呼吸筋のトレーニングにもなりますので、毎日少しづつ続けていきましょう。

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【参考文献】

  1. 赤居正美,脊髄損傷の排便マニュアル,リハビリテーションマニュアル29,2013