脊髄損傷は回復しない?【維持期・頸髄損傷者の機能回復を紹介】

【脊髄損傷を負った方】車椅子生活になったけど歩けるようになるのか。一生車椅子ですと言われたけど、回復する手段はないか。実際に脊髄損傷を負った人の経験を知りたい。

このような疑問に対して、入院から退院までの流れや退院までにすべき事、そして、頸髄損傷から10年が経過した女性を例に答えていきます。

目次

・脊髄損傷の回復は難しい【一生車椅子と言われる理由】
・入院から退院までの流れ【脊髄損傷者が退院までにすべき事】
・維持期の脊髄損傷でも回復できる【頸髄損傷者の機能回復を紹介】

この記事は、理学療法士やアスレチックトレーナーとして脊髄損傷のリハビリ、トレーニング経験を多く持つ、障害者専門のパーソナルトレーナーが書いています。

脊髄損傷の回復は難しい【一生車椅子と言われる理由】

脊髄損傷が回復しない理由

脊髄損傷は現代の医学では回復が難しいと言われており、「あなたは一生車椅子生活です」と宣告される事もあります。
その理由は「傷ついた神経を治す手立てがない」ため一度、身体のコントロールを司る中枢神経という神経が傷つくと立つ、歩く事が難しくなるからです。

個人的に脊髄損傷と脊髄では意味合いが違ってくると思っています。
傷ついた「脊髄」は現代の医学では確かに治す事は難しいですが、脊髄損傷はリハビリやトレーニングによって身体的な機能回復をすることができます。
脊髄=回復が難しい
・脊髄損傷=身体の機能回復はできる
こんなイメージです。

脳からの命令を伝える中枢神経とは

中枢神経とは身体の真ん中を頭からお尻まで一本でつながっているイメージです。この神経は身体のコントロールを司り、脳からの命令を手足に伝える役割を持っています。

脊髄損傷の状態を水が出ているホースで例えるとホースを足で踏んだ場合、踏んだ先から水が出てきませんよね。(水は脳からの電気信号、蛇口が頭でホースが中枢神経です)。
それが人の身体の中で起こっていると思ってください。
ホースは踏んだ足を退かせば再び勢いよく水が流れますが、神経では傷ついてしまうと流れを戻ることが難しいんです。

この傷ついた中枢神経(脊髄)は現代の医学で完全に回復することは難しいため、一生車椅子生活になると言われています。

入院から退院までの流れ【脊髄損傷者が退院までにすべき事】

怪我から退院までの流れ(急性期、回復期、維持期)

まず脊髄損傷になってから退院までの流れを説明します。

  1. 事故などで怪我をした場合、まず救急搬送され「急性期病院」に入院(約2週間〜1ヶ月)ます。
  2. 怪我の状態がある程度、落ち着いたら急性期から「亜急性期または回復期」の病院に移ります(約6ヶ月)。
  3. 怪我をしてから約7、8ヶ月程度で自宅に帰り維持期の期間を過ごします。

急性期(約2週間〜1ヶ月)
脊髄損傷では同時に背骨を骨折することも多く、怪我を安定せるため多くの時間をベッドで安静に過ごさなければなりません。頸髄損傷者では呼吸ができなくなることもあり、人工呼吸器をつけることもあります。
ある程度、怪我が安定してきたらベットから起きる、車椅子へ乗る練習を始めます。ベッドで寝ている時間が長いと、初めて起きた時、座った時は血圧が下がったり、めまいがする事もあります。しかし、徐々に繰り返すことで慣れてくるでしょう。
車椅子に乗れるようになる、リハビリを開始する時期になると、急性期から次の病床や病院へ移動します。

亜急性期と回復期(約6ヶ月)
この時期から、本格的なリハビリが開始され、初めは起き上がりや車椅子の操作などを練習していきます。
そして、重要な動作が「トランスファー」と言ってベッドから車椅子への乗り移りです。
トランスファーが自由にできると入院生活での自由度が大きく変わってきます。ですのでみんな早くトランスファーが一人でできるようになりたいと思うはず。
上半身が自由に使える方はわりと早くできるようになるが、肘を伸ばす事が難しい頸髄損傷では、時間と練習が必要になります。その他に、お風呂、トイレ、食事などの身の回りの動作の練習も行っていきます。
この時期はいざ体を動かそうと思っても、力の入れ方がわからない、感覚がないことで、初めは上手に自分の体をコントロールする事が難しいと思います。しかし、動く事で自分の身体への理解が確実に深まるので積極的に麻痺部を動かす、触る事をしていきましょう。

維持期(約6ヶ月後〜)
身の回りの動作ができるようになり、自宅で車椅子の生活ができるようになったら退院の準備です。身体機能の回復とだけでなく、車椅子で過ごす為の家の準備なども必要になります。これは病院のスタッフと相談しながら入院中に進めていきましょう。
退院時期に関しては残念ながら脊髄損傷の入院期間が6ヶ月と定められています。自宅に帰れない方などでは日常生活の機能向上に特化した施設などへの転院も可能です。しかし多くの方は自宅へ帰り、その後は外来リハビリ、訪問リハビリなどを続けることになります。ここでのリハビリは機能向上よりも退院後の機能維持がメインになることが多いです。

 

脊髄損傷者が退院までにすべき事とリハビリの役割とは

ここまでで、入院から退院までの大まかな流れ、それぞれの期間でやるべき事がわかったと思います。

でもこう思いませんか?
「足が動かないんだからもっと歩く練習をしたい」と。

しかし、病院のリハビリにも役割があり、それが「在宅復帰」という役割です。そのため、まずは在宅や社会に復帰するためのリハビリが優先されるんです。
これは非常に重要なことで、例えば入院中に基本的な日常生活の動作を回復させることができると、復学や復職がスムーズに行えます。また外出や趣味に時間を使えたり、身体を回復したいと思った時は立つ、歩くなどの積極的なリハビリに移行することができるからです。

人によっては2ヶ月ほどである程度、身の回りの動作を一人で行える方もいます。その場合、残った入院期間で立つ、歩くなどのリハビリに移行できることもあります。

一概に脊髄損傷と言ってもその病態は様々です。日常生活の動作獲得が難しい場合もあります。しかし、できる限り入院中に自分でできる動作を回復させておく事が退院後の生活の質に影響を及ぼす事は間違えありません。
立つ、歩くリハビリも重要ですが、長期的な目線で一つづつできることを増やしていくことが大切です。

維持期の脊髄損傷でも回復できる【頸髄損傷者の機能回復を紹介】

トレーニングを続ける重要性

一般的な認識として退院後つまり維持期になると、機能回復が難しいと言われています。
それは、機能回復が急性期から6ヶ月までは右肩上がりですが、6ヶ月以降を境に回復が一定になるからという理由です。
しかし、維持期の脊髄損傷者でも継続的にトレーニングをする事で機能回復する事ができます。
弊社でトレーニングを続けている頸髄損傷者を例に説明していきます。

彼女は2009年に交通事故に遭って頸髄の4,5番を損傷し脊髄損傷と診断され、全身の運動機能はもちろんのこと、呼吸器の機能も悪くなり、受傷当時はお医者さんに、怪我から2年以降の身体変化は期待できないと言われました。それでも週2回の在宅トレーニングを通して徐々に機能回復する事を示してくれています。

彼女の詳しい紹介はこちらから

脊髄損傷が回復するか、させられるかは自分次第

紹介した彼女は外来リハビリ、訪問リハビリでは自分の身体を変化させる事は難しいと考え、パーソナルトレーニングを選択し、動画のように徐々にできる事が増えてきています。

ですので、維持期の脊髄損傷者でも諦めずに継続的にトレーニングをする事で機能を回復させたり、今よりも悪くならないような努力をする事ができます。

彼女のように医療保険や介護保険のリハビリでは物足りないと感じている方は多く、我々はそんな現状を打開する為に、医療、介護保険に頼らない自費でのリハビリ、トレーニングの提供を始めました。

訪問トレーニングの様子はこちら

まとめ

いかがでしたでしょうか。

脊髄が傷ついた場合、現在の医学では神経を根本的に回復させる事は難しいと言えます。しかし、脊髄損傷はリハビリやトレーニングを通じて、身体機能の回復や変化を起こす事は可能です。

近年では再生医療による将来的な希望があり、その治療を万全な状態で受ける為にいま出来る機能の回復や維持を積極的に行う必要があると思います。

脊髄損傷を負って、この怪我は治るのか、回復するのかと疑問に感じた方の手助けになれたら幸いです。