車椅子ユーザーのむくみ(静脈血栓)を運動で予防しよう!

今回のユニバーサルトレーニングセンターの記事は浮腫(むくみ)に関してです。

麻痺の影響などで動かしにくくなった足が「浮腫みやすい」といった悩みをお持ちの方も多いと思います。
車椅子ユーザーの方はさらに足を動かす機会が減ることで足がむくみやすいのではないでしょうか。

当記事では車椅子ユーザーのむくみの原因や対処方法をご紹介したいと思います

浮腫(むくみ)の原因とは?

なぜ、足がむくみやすいのかについて簡単にご説明します。

  • 麻痺や車椅子生活によって足の運動が行えない。
  • 運動による汗や排尿の問題で体外に水分を排出できない

  • 血管のめぐりが悪くなる
  • 血管が冷える

  • 新陳代謝が低下する

これらの原因によりむくみが生じると言われています。
特に運動をする事が難しい車椅子ユーザーはこの症状が顕著に出てしまうのです。

静脈血栓とは?


この血液のめぐりが悪くなり重症化すると「静脈血栓」になることがあります

長い時間すわって足を動かさないでいると、ふくらはぎの筋肉の働きが弱くなることで、足の血液は上に押し上げる力が加わらず膝から下に溜まってしまいます。
そうすると、静脈から周囲に水分が滲みだし足にむくみが生じます。
それと同時に血栓ができ、これが深部静脈血栓症と言われるものです。

深部静脈血栓で怖いのは長い時間一定の姿勢をとっていたあと、急に動き始めた時足に溜まったていた血栓が血流とともに肺や心臓に飛んでしまうことです。
それによって胸痛や呼吸困難を伴って死に至ることがあります。
これは肺塞栓症やエコノミー症候群といわれ深部静脈血栓症の合併症です。

車椅子ユーザーの方々は日常から座っている姿勢が長く、常にこの深部静脈血栓が引き起こる可能性が高いと言えます。

車椅子ユーザーの静脈血栓予防とは

以下は車椅子ユーザーでも出来るむくみに対しての予防方法になります。

  • 30分ごとに10回ほど足首を曲げたり伸ばしたりする
  • ふくらはぎや足の筋肉をマッサージする
  • 弾性ストッキング(圧迫力がある靴下)を着用する

などが一般的なむくみの予防方法として挙げられますが・・・
これ以外にも私が最近読んだ文献に記載されていた方法をご紹介します。

脊髄損傷者の車椅子駆動と深部静脈血栓

脊髄損傷者の深部静脈血栓を対象とした研究によると、脊髄損傷者は特に社会復帰後は、車椅子に座っている時間が長くなるため、うっ血を起こしやすく深部静脈血栓の発症率が高い傾向にあり、脊髄損傷者は生涯にわたって予防すべき疾患であるとされています。

深部静脈血栓の予防方法としては
4~12kg/hの車椅子駆動(約5分で300m~1km)、またはそれに相当する上肢運動が,静脈血栓の発症に対する予防法となり得る!
と述べられています。

さらにより駆動速度を速く、運動強度を増加させることで、深部静脈血栓の発症率を低下させる可能性があるとされています。

この事実は脊髄損傷者のみならず、足を動かすことが難しい車椅子ユーザー全てに共通します。

皆さんいかかでしょうか?
普段からどれくらい車椅子を漕いだり、運動を行なっていますか?

日頃から立つ、歩くなどの運動を行い足を動かすことががやはり最適です。
しかし今回ご紹介した文献によると車椅子を漕ぎ運動することでも深部静脈血栓症を予防することができる可能性があります。

一般的な静脈血栓の観察ポイント

ふくらはぎに小さなコブがある
下肢の変色の有無
足のむくみ
下肢の腫脹・だるさ・しびれ感・熱感・発赤・浮腫・冷感・圧迫感の有無
足趾の色・チアノーゼの有無

このような症状が見られる方は特に、普段から上肢の運動を心がけることで深部静脈血栓が予防できるかもしれません。

さあ、今日からできる運動を心がけ自らの体をケアしていきましょう!

 

参考文献

  1. 車椅子座位保持が下肢深部静脈血流速度に及ぼす影響
    http://doi.org/10.11529/thpt.26.0.17.0
  2. 脊髄損傷対麻痺者の車椅子駆動が大腿静脈血流に与える影響
    http://doi.org/10.14900/cjpt.2013.0453