車椅子ユーザーの褥瘡予防する4つの秘訣

みなさん、こんにちは。
今回のユニバーサルトレーニングセンターの記事は
前回お伝えした車椅子ユーザーの褥瘡(ジョクソウ)に関しての第2弾になります。

前回の記事では褥瘡に関しての簡単な知識として、なぜ褥瘡ができてしまうのか?
そのメカニズムと褥瘡の深さの段階、そして褥瘡になりやすい人の特徴をお伝えしました。

前回の記事が気になる方はこちらからチェックしてみてください。

今回は褥瘡の予防策についてご紹介したいと思います。

褥瘡予防のキーポイントとなってくるのは、大きく分けて以下の4つになります。

  1. ポジショニング

  2. 体圧分散

  3. 栄養管理

  4. スキンケア

ここでは一つ一つみていきましょう!

褥瘡予防に重要なポジショニング

まず一つめの褥瘡予防策はポジショニングです。
ポジショニングとは、車椅子やベットでの姿勢になります。
つまり体位変換の重要性の事ですね。

褥瘡のメカニズムはいたって簡単。
圧が持続的にかかってしまうから。
この圧を取り除けば褥瘡はできません。

No pressure, No pressure sore

圧無くして、褥瘡なし

No music, No lifeに似せた形になりますが、まさにこの通りなんです。

その為、随時こまめにプッシュアップや体位変換で除圧をし、患部への圧を逃してあげるのが一番の予防策になります。

プッシュアップや除圧動作は最低でも15~20分に一回は必要と言われています。

しかし、除圧動作をしっかり続けていても、残念ながら褥瘡になりやすい人はいます。
その場合はそれ以外の項目をしっかり対策出来ているか確認が必要になります。

褥瘡予防に重要な体圧分散

二つ目の褥瘡予防は体圧分散ですが、メインでは座面・接地面の問題、つまりクッションの問題になります。

みなさん車椅子用のクッションは色々な物を使っているとは思いますが、褥瘡予防にいいといえば、やはりロホクッションがメインになるでしょう。

ロホクッション

ロホクッションはジェル型のジェイクッションよりも圧が分散しやすいので、基本的には褥瘡予防には効果的とされています。

しかし、ロホクッションさえあれば褥瘡は出来ないと言うわけではありません。
むしろ深い傷ができてしまったあとでは、
ロホクッションの分散力がかえって悪化させてしまうこともありますので、注意は変わらず必要です。

また、車椅子の座面には気を使っていても、その他の座面はいかがでしょうか?

例えば、車に乗っている時やトイレの座面などです。
意外なことに車を運転する際にクッションを使っていない人も結構多いのです。

車をよく使う人であれば、30分〜1時間くらいの運転は日常的ですよね。
しかし、短い時間だからと侮って運転中にクッションを使用していない事でも、十分に褥瘡になってしまう可能性はあるのです。
その為、運転時もクッションを使用することをお勧めします。

またトイレも同様です。
排便時間が長くなるとどうしてもトイレに座っている時間が長くなります。
1〜2時間排便に時間がかかってしまう人も珍しくありません。

そういった時はこのトイレ用ロホクッションがオススメです!


これがあれば長時間トイレに籠らなくてはならない時も安心ですね。

使用上の注意としては安定性を確保する為、かなりベルトがキツめなので若干取り付けるのが大変です。

また、ロホがある事で多少バランスが取りづらくなってしまうので、使用の際にはバランスを崩さないように注意して下さい。

褥瘡予防に重要な栄養

3つ目は対策は栄養管理になります。
褥瘡は怪我ですので、怪我を治すにはしっかり栄養を取らなければなりません。

その為には高エネルギー・高タンパク質が必要とされています。

特にタンパク質が褥瘡予防そして治癒に対して非常に効果的です。
タンパク質と褥瘡に関しては以前記事に書いたので、こちらをご覧ください。

また褥瘡になった場合は最低でも基礎代謝の1.5倍を摂取する必要があると言われています。
これは1.5倍の栄養摂取した場合の方が、そうでない場合に比べて褥瘡の治りが良くなったという実験結果に基づいてのものになります。

その為、1日3回高タンパク質且つバランスのいい食事をとる事が必要です。

頸髄損傷など四肢麻痺の為、運動量をあげれない為、食事制限のみでダイエットしているという方も多いですが、過体重より栄養失調から発生する褥瘡の方が圧倒的に多いので褥瘡予防という点で考えると、しっかり栄養を摂取することは非常に大切です。

その他にもビタミンCやビタミンAは新しい血管を作るのに必要な栄養素であり、鉄や亜鉛も瘢痕組織の形成や治癒を早めたりしてくれます。

特に褥瘡患者には亜鉛が足りていないことが多いので、1日あたり15mg程摂取する必要があると言われています。

またアルコールや喫煙も褥瘡時には控えるべきです。
アルコールの摂取は傷の治癒を遅くさせますし、喫煙は患部への酸素供給を少なくしてしまうので結果的に傷口が治りづらくなってしまいます。

褥瘡予防の為のスキンケア

また肌を清潔に保つことも重要な褥瘡予防方法になります。

褥瘡に一番なりやすいのはお尻の部分です。
車椅子ユーザーの多くは排便機能の問題によりオムツをつけていると思いますが、オムツにより蒸れてしまったり、また尿や便で汚れてしまうこともあります。

そしてそのオムツ内の高温多湿な環境は、皮膚を弱い状態にさせてしまいます。

その為、日頃から皮膚を清潔にする事を心掛ける必要があります。
撥水性のクリームを塗って皮膚を保護することもオススメです。

また赤くなった部分にマッサージを行うと返って悪化してしまうことがありますので、
くれぐれも患部は優しく扱って下さい。
身体を洗う際もゴシゴシ擦らずに、泡で優しく洗うようにするといいでしょう。

また傷口が深い褥瘡が治った後には瘢痕組織が出来てしまいます。
瘢痕組織は血液供給が少なく、皮膚の弾力性も低い為、繰り返し褥瘡になりやすくなってしまいます。

なるべく深い傷になる前に治癒させ、瘢痕を作らないことも褥瘡予防では大切なことになります。

こんな時はすぐに医師に相談

褥瘡は車椅子生活や寝たきりの状態という生活スタイルが主な発生原因になります。

浅い傷であれば数日うつ伏せの状態を保つなどができれば、比較的褥瘡は治りやすいですが、その生活スタイルを思い切り変えない限り、すぐに治ることがなく、褥瘡をケアしながら生活をしなければなりません。

もちろん褥瘡が出来た時はすぐに病院に行った方がいいです。
軽度の場合、数週間に一回の通院という形になることが多いでしょう。

しかし、こんな時はすぐに医師・看護師に診てもらいましょう。

  • 傷口が熱を持っている時
  • 褥瘡からの悪臭がする時
  • 褥瘡からの滲出液が増えた時
  • 膿が出ている時
  • 痛みや自律神経過反射が出ている時
  • 発熱がある時

褥瘡はすぐに悪化して行ってしまうので、このようなサインが出たら、すぐに病院を受診しなければなりません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は褥瘡の予防、対応策についてご紹介致しました。

ポジショニング、体圧分散、栄養管理、スキンケアなどをしっかり一つ一つ見ていくと、褥瘡対策として出来る事はまだまだあるのではないでしょうか?

褥瘡は一回手術が必要なくらいまで深刻になってしまうと2~3ヵ月入院しなくてはならなく、またその間は傷口に負荷をかけるポジションである、仰向けや車椅子に乗ることも出来なくなってしまいます。

またひどい場合では1~2年程入院しなければならないケースもありますので、そうなる前に予防する事が一番重要になります。

みなさん日頃から細心の注意を払って生活しているとは思いますが、これらの対策を参考にしていただき、褥瘡ゼロの生活を目指して健康的に生活していきましょう!

参考文献

  1. 日本褥瘡協会
  2. 褥瘡患者さんの為の栄養ケアポケットガイド 監修:美濃良夫先生 May 2013.
  3. 日本せきずい基金 You Can!〔増補改訂版〕第12章 褥瘡