今回のユニバーサルトレーニングセンターの記事は、脊髄損傷と寿命に関してのお話です。
これは皆さん大変気になるトピックではないでしょうか?
医療の発展のお陰で、脊髄損傷者の生存率は過去30年で大きく向上してきました。
特に急性期脊髄損傷者の生存率は著しく上昇し、
多くの人が大きな事故を受けた後でも生き残れるのようになった事は、昔では考えられない事であります。
そして、急性期だけでなく慢性期の脊髄損傷者も以前と比較すると、長く生きられるようになってきました。
しかしながら、それでも脊髄損傷になり車椅子生活を強いられることで、
健常者以上に健康であり続けることは、大変な事に変わりはありません!
今回は健常者と比較して、脊髄損傷者はどれくらいリスクがあるのか、そしてその対応策をお伝えしたいと思います。
脊髄損傷者と健常者の比較
まずは健常者の平均寿命からみていきましょう。
厚生労働省の「平成28年簡易生命表」によると、
日本人男性の平均寿命は80.9歳、女性は87.1歳とされています。
ちなみに昭和50年頃は男性71.7歳、女性76.8歳だったようです。1
昭和50年頃から約40年で平均寿命が男性で9歳、女性で11歳増えており、
平均寿命はほぼ毎年右肩上がりで上昇しております。
さすが世界一の長寿の国、日本ですね!
そして、死亡原因ですが、これは年代によって変わってくるので、
どの世代を見るかによって結果は異なるのですが、
今回は80~84歳の死亡原因に注目して見てみましょう。
結果は
- 悪性新生物(がん):29.6%
- 心疾患:16.1%
- 脳血管疾患:11.6%
- 肺炎:11.4%
となっています。
日本人健常者はがんでなくなる方が一番多いのですね。
その次に心臓、脳、呼吸器と言う並びになっています。
後ほど、脊髄損傷者と比較しますが、死亡原因にも健常者と脊髄損傷者では大きな違いがあるのです。
続いて脊髄損傷者の話に入る前に、平均余命と平均寿命の違いについて説明したいと思います。
Wikipediaによると
平均余命
ある年齢の人々が、その後何年生きられるかという期待値のことである。
平均寿命
0歳時における平均余命
となります。
例えば80歳以上まで生きた人だけ見ると平均余命は10年あるので、
90歳ぐらいまで生きられそうだが、日本人の平均寿命は80歳。
なんて言うように使いますのでご注意ください。
20世紀の脊髄損傷者の寿命
ここからは脊髄損傷者に関しての話になります。
日本の研究ではなかなか最近のデータはないのですが、
その中でも見つけた研究のデータを参考にすると、
1943~1972年における脊髄損傷者の死亡原因第1位は尿路合併症、第2位心疾患、第3位呼吸器疾患であったそうです。
しかし、最近では尿路合併症での死因は減少し、
呼吸器の問題でなくなってしまう方が多くなっている様です。2
また1990年代では死亡原因は1位が肺炎などの呼吸器の感染症、2 位が不慮の事故、3 位が自殺であったそうです。
また脊髄損傷者と健常者を比較すると、脊髄損傷者はなんと
敗血症で死亡する確率が82倍、肺塞栓で死亡する確率が46倍、肺炎で死亡する確率が37倍
になると報告されています。
これらの病気はどれも呼吸器の異常から起こるものですので、
脊髄損傷者に対しての呼吸器のケアが非常に大切
ということがわかりますね。
また重症度別で見ると、
四肢麻痺のフランケルA,B,C群は、健常者より平均余命が約20年減少してしまい、
また対麻痺のフランケルA,B,C群は10年が少ないと報告されています。
別の研究では一般人の平均寿命を100%とすると、
完全四肢麻痺では70%、完全対麻痺では84%、四肢麻痺対麻痺共にフランケルDでは92%という結果であった様です。
フランケルDに関してはあまり寿命に影響を受けませんが、
完全損傷の四肢麻痺では大きく寿命が短くなってしまうと言うことになります。
最近の研究から見る脊髄損傷者の寿命
といっても上記のデータは1990年代の研究が元になっているので、
健常者の平均寿命が伸びている現在ではどうなのって問題があります。
色々論文を探した結果、今回は2012年にオーストラリアで発表された研究がありましたので
それを参考にしたいと思います。
脊髄損傷後の寿命:50年間での研究3
と言うタイトルの論文になります。
ちなみに2013-2015のオーストラリアの平均寿命は男性80.4歳、女性84.5歳になります。
男性は日本とほぼ一緒、女性は3歳ほど短いですね。なので、大体は日本と同じと考えていいのではないかと思います。
まずは受傷後一年以内になくなってしまう人ですが、
これは四肢麻痺で8.2%、対麻痺で4.1%となっています。3
中でもC1-4のレベルの人々が一番影響を受けやすく、
C1-4でASIA ABCの人は1年以内の死亡率が13.5%と極めて高い数値となっています。
もちろん30年前は同じレベルで死亡率が32.4%なので大きくその死亡率が減少しているのですが、
それでも10人中1人がなくなってしまうと考えると大きい数値ですよね。
そして次に、受傷から一年以上の生存者をみてみましょう。
受傷後から40年生き延びることができたのが、四肢麻痺で47%、対麻痺が62%となっています。
そして、25〜65歳の間で平均余命をみて見ると
- C1-4の四肢麻痺 ASIA A-C: 64-69%
- C5–8の四肢麻痺 ASIA A–C: 65-74%
- T1–S5の対麻痺 ASIA A–C: 88-91%
- 四肢麻痺、対麻痺全てのAISA D: 96-97%3
ほどとなっています。
先ほどみた過去のデータと同じくASIA Dの不全損傷ではほとんど健常者と比べて差はありませんが、
四肢麻痺では60~70%ほどの余命
となってしまうことが明らかになっています。
これは若くして頸髄損傷で四肢麻痺になってしまった人は
17~20歳ほど平均余命が減少してしまうことになります!
ほぼ、過去のデータと一致してきますね。
ちなみに対麻痺は5~7歳ほどの減少なので、
過去と比較すると、対麻痺の余命は少し伸びてきたが、
四肢麻痺の余命に関してはほぼ一緒と言うことになります。
ちなみに死亡原因は呼吸器の問題18.8%、心血管疾患17.6%、ガン14.5%、脳血管疾患8.8%となっています。3
これも先ほどと同じように呼吸器の感染や疾患によっての死亡原因一番高いですね。
また、メタボの延長線上にある心臓、脳血管の問題も非常に割合が高くなっています。
脊髄損傷者の寿命を長くするには?
では、脊髄損傷者が長く生きる為には?寿命を長くするにはどうすればいいのか?
が気になるところですよね。
これは死亡原因の割合が高い、呼吸器そして心血管などの循環器を健康にする、強くする必要があります!
その為には以下事項を積極的に行なっていくことが必要です。
-
なるべく風邪を引かないような身体作りをする
-
体力をつける
-
喉を大切にする
-
腹筋をつけて排痰できるようにする
-
呼吸器のトレーニングをする
-
脂肪量を減らして筋肉量を増やす(BMI22を目安に)
-
定期的に病院にかかり、健康状態のチェックをする
みなさん、どうでしょうか?
上記の事項を行えていますか?
今まで以上に身体を動かすことの必要性、呼吸器を強くする事の必要性が見えてきたかと思います。
でもどうやって身体を動かすの?
どうやって呼吸器を強くするの?
と不安な方は是非、ユニバーサルトレーニングセンターにお問い合わせ下さい!
我々は皆さんの10年後、20年後の将来を一緒になって考えせさせて頂きます。
10年後も20年後も健康であり続ける為に、
日々の生活から少しづつ改善して健康的に長く生きられるようにしていきましょう!!
参考文献
- 厚生労働省「平成28年簡易生命表」
- 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 7, 2017 脊髄外傷の急性期治療
- Middleton, J W, et al. “Life Expectancy after Spinal Cord Injury: a 50-Year Study.” Spinal Cord., U.S. National Library of Medicine, Nov. 2012, www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22584284.