障害者や車椅子ユーザーの方々が日々行っているリハビリ、自主トレですが、「体重」「柔軟性」「合併症」の問題があるとリハビリの効果を下げてしまっている可能性があります。
せっかくリハビリ、自主トレをしているのだから効率よく行いたいですよね。
そこで、当記事では障害者や車椅子ユーザーのリハビリ・自主トレの効率を下げている3つの要因についてご説明します。
目次
- 運動の効率を下げる3つの要因【体重、柔軟性、合併症】
−立位・歩行・トランスファーへの影響
−ベッド上での動作や立位への影響
−リハビリ・トレーニングを阻害する - 運動効率を上げる身体イメージ
−運動イメージ・身体イメージを身につける - まとめ
この記事は、理学療法士やアスレチックトレーナーとして障害者、車椅子ユーザーのリハビリ、トレーニング経験を多く持つ、障害者専門のパーソナルトレーナーが書いています。記事の内容はすべての車椅子ユーザーに当てはまるわけではございません。
運動の効率を下げる3つの要因【体重、柔軟性、合併症】
せっかくリハビリや自主トレを行うなら、なるべく効率的に行いたいですよね。
その為には運動の効率を下げる可能性がある要因を知る必要があります。
障害者や車椅子ユーザーのトレーニングをしていると、体重がネックとなってしまう経験がよくあります。
【立つ・歩く】
リハビリやトレーニングにおいて、体重がオーバーしていると自分の体を支える事がより大変になってしまいます。
その為、トレーニングによって筋力は強化されているが、体重がネックとなってなかなか立位や歩行に活かしきれないという事があります。
【トランスファー動作】
トランスファーは腕と体幹を使ってお尻を持ち上げ移りますが、体重がオーバーしている場合、なかなかお尻が持ち上がらず引きずってしまったり、手首を痛める事があります。
車椅子ユーザーにとって手首は生命線と言っても過言ではありません。
日頃からトランスファーを繰り返しているだけで、実は手首には相当の負担がかかっており、体重がオーバーしていればそれだけ負担の増えるのです。
ですので、リハビリや自主トレの効果を発揮したい、トランスファーを楽に行いたい場合には体重コントロールが非常に重要となってきます。
まとめると体重オーバーによって
- 体重を支える為の筋力がより必要になる
- トランスファーが大変になる、手首への負担が増す
という悪影響が出てしまします。
車椅子ユーザーの体重やBMIに関しては以下の記事をご参考ください。
車椅子ユーザーのダイエット!痩せにくい身体を改善させるには?
脊髄損傷者に対してのBMIの見直しとBMIが与える影響
筋肉・関節の柔軟性では「背骨・骨盤周囲・膝・足首」が硬くなると事でリハビリや自主トレの効果を発揮し難くなります。
【背骨】
車椅子ユーザーでは体幹を回旋する機会が減る事で、背骨の動きが悪くなり寝返り、起き上がりなどの動作や座位や立位でのバランスを阻害する要因となります。
【骨盤周囲・膝・足首】
骨盤周辺や膝・足首が硬くなると、立位や歩行に影響を及ぼします。
車椅子に座っている姿勢は「股関節の前(腸腰筋・大腿四頭筋)」と「膝裏(ハムストリングス、下腿三頭筋)」が硬くなりやすい特徴があり、これらの筋肉が硬くなると立った時に股関節や膝が伸びない、足首が硬くて踵が着かないといった状態となってしまいます。
筋肉や関節が硬くなる事で、運動効率が下がり通常よりも過剰に力が必要になったり、姿勢を維持する事が大変になってしまいます。
障害者、車椅子ユーザーでは疾患によって様々な合併症がありますが、その中でも「褥瘡・起立性低血圧・高血圧症」などの合併症が影響を及ぼします。
【褥瘡】
仰向けや座位などお尻を着いて行うトレーニングが難しくなってしまい、運動の幅が制限されてしまいます。
また、重度の褥瘡の場合は車椅子に座ることも禁止され、リハビリを一時的に注意し褥瘡治療に専念しなければなりません。
【起立性低血圧】
主に脊髄損傷者に見られる症状ですが、座る、立つなど姿勢が変わる事で血圧が急激に下がり、目眩や意識がもうろうとしてしまう症状です。
起立性低血圧が重度の場合、車椅子に座っている事でさえ難しくなってしまう事もあります。
【高血圧症】
運動時に血圧が正常よりも高い場合、血管への負荷が強くなり連続した運動や高負荷な運動に制限が出てしまいます。
高血圧の原因は肥満や内臓脂肪が溜まっている場合が多く、過剰な脂肪によって身体に様々な負荷がかかり、血圧が上昇してしまいます。
そのため、血圧が高くて運動に制限がある方はまず肥満を疑い改善させる必要があります。
疾患によってはど改善が難しい合併症もありますが、意識的に改善ができる合併症はなるべく減らす事で運動の幅や効率を上げる事ができます。
運動効率を上げる身体イメージ
身体麻痺や感覚障害があると麻痺している部分を動かすイメージが難しくなりますが、日頃から麻痺部を意識する事で、徐々に身体のイメージができるようなります。
これまでお伝えした3つの要因を改善する事でリハビリ、トレーニング効率を上げる事が可能ですが、それ以外にも運動や身体のイメージを持つ事でも効率的な運動が可能になります。
特に、関節や筋肉など自分が動かしている部分をしっかりイメージし、感覚が鈍い方でも足の重さや骨から伝わる刺激を感じる事で、動きにかなりの違いが出てきます。
また、イメージトレーニングの研究によると身体イメージや運動イメージのトレーニングを行う事で、その運動に必要な神経回路が活動的になることもわかっています。
リハビリ、自主トレを阻害する3つの要因の改善に加え同時に「身体イメージ」も意識しながら運動を行ってみてください。
まとめ
今回は多くの障害者や車椅子ユーザーとのトレーニング経験をもとにトレーナーが日頃、実感している「機能回復を阻害する要因」についてまとめました。
ご紹介した3つの中でも特に「筋肉の柔軟性」が運動に影響を与えると感じています。
筋肉はそれぞれ連結しているため、一つの筋肉が硬いと身体の様々な部分を引っ張ってしまい、身体を動かす事が難しくなってしまいます。
そのため、日頃から身体が硬くならないように肩や股関節、足首のストレッチを行なっていただきたいです。
また体重オーバーや合併症は生活習慣病の危険性を上げるだけでなく、実はリハビリや自主トレの効率を阻害している要因にもなりかねます。せっかくのリハビリや自主トレを効率的に行なっていくために、ご紹介した3つの要因を意識して改善していきましょう。