車椅子ユーザーがすべき新型コロナウイルス感染予防【まとめ】

新型コロナウイルス感染を防ぐ対策として、「手洗い」や「うがい」の徹底が叫ばれていますが、車椅子ユーザーでは他にも対策すべきポイントがあります。そのポイントは少しの気づきや手間をプラスするだけで効果が期待できるものです。

そこで当記事では車椅子ユーザーがすべきウイルス感染への対策や肺炎の悪化を予防する為のトレーニングについてお伝えします。

車椅子ユーザーの感染予防に関してはBeneficial Designs社のピーター・アクセルソン氏の情報を参考にしています。

出典:車椅子・支援機器ユーザーのみなさまへ COVID-19の予防

脊髄損傷者による新型コロナウイルス(CVOVID-19)の感染報告がイタリアで発表された情報に関してはこちら
脊髄損傷の新型コロナウイルス 感染について

目次

・新型コロナウイルスの滞在時間と感染経路
・車椅子ユーザーがすべき感染対策
・【コロナウイルス】肺炎の悪化を防ぐ呼吸トレーニング
・まとめ

この記事は、理学療法士やアスレチックトレーナーとして障害者、車椅子ユーザーのリハビリ、トレーニング経験を多く持つ、障害者専門のパーソナルトレーナーが書いています。

新型コロナウイルスの滞在時間と感染経路

新型コロナウイルスの感染の経路は、大きく「飛沫感染」と「接触感染」とされ、空気中や物に数時間付着したまま死滅しない場合もあるようです。
そこで新型コロナウイルスが空気中や物などに付着した場合どれくらいの滞在時間があるのかを表にしました。

車椅子の素材によく使われている、チタンやカーボン、アルミなどの素材はまだ詳しく研究されていないようですが、ステンレスやスチールと同様の部類と考えると2日間くらいは車椅子にウイルスが付着していることになりますね。

 

車椅子ユーザーの感染が予想される経路
  • ハンドリム
  • アームサポート
  • タイヤ
  • 電動車椅子のジョイスティック
  • 多目的トイレの手摺りなど
  • 健常者からの飛沫感染

出典:車椅子・支援機器ユーザーのみなさまへ COVID-19の予防

【車椅子に付着しているウイルス】
車椅子ユーザーでは「ハンドリム」や「タイヤ」など、電動車では「ジョイスティック」にウイルスが付きやすい傾向があります。
この部分は手で触れる頻度も高い為、せっかく入念な手洗いをしてもハンドリムの消毒をしていなければ、再びウイルスが手に付着してしまいます。
また、プッシュアップや多目的トイレの手摺りなど、手を使う場面が多くその分、生活の中で手にウイルスが付着する確率が高くなっています。

【飛沫感染】
立っている健常者よりも常に低い位置にいる車椅子ユーザーには健常者の飛沫が飛びやすい状況になっています。このことは車椅子ユーザーだけでなく、健常者側も十分に理解しておかなければなりません。

 

車椅子ユーザーがすべき感染対策

出典:車椅子・支援機器ユーザーのみなさまへ COVID-19の予防

 

感染経路の消毒と飛沫感染の予防

【感染経路の消毒】
日頃から車椅子をこまめに消毒している方は意外と少ないと思います。そのため手洗い後、車椅子に触れると再びウイルスが付着してしまいます。
しかし、感染経路を把握しておけば対策が可能です。
上記の感染経路で示したとおり、定期的に消毒すべき部分は「ハンドリム」「アームサポート」「タイヤ」「ジョイスティック」「ブレーキ」などです。
これはテーブルやスマホの消毒と同様の考え方で、日頃から接触頻度が高い部分に関しては消毒の徹底を心がけましょう。

【飛沫感染への対策】
車椅子ユーザーでは健常者と会話する場合、健常者からの飛沫をダイレクトに受けやすい位置関係にあります。
飛沫の大きさは5µmであり、一般的なマスクで防げる粒子の大きさが1.7µm~5µmである為ため、車椅子ユーザーと健常者がお互いにマスクをする事で、飛沫からの感染防ぐ事ができます
また、正面に向かい合わないなど、ちょっとした工夫でも対策ができそうですね。

 

【コロナウイルス】肺炎の悪化を防ぐ呼吸トレーニング

新型コロナウイルスに感染すると「発熱」と「肺炎」が主な症状と言われていますが、その対策には「呼吸筋」と「猫背」がポイントになってきます。

【呼吸筋】
腹筋や呼吸筋が弱っていたり、麻痺があると強い咳がでずにウイルスや異物を体外に出す力が弱く、肺炎になりやすい傾向があります(感染の有無にかかわらず)。
そのため、普段から腹圧や呼吸筋のトレーニングを行なっておく事で肺炎の発症や悪化を予防する事ができます。

【猫背】
見落としがちですが、猫背のような不良姿勢も呼吸に影響を与えます。
猫背によって胸や体幹が潰れると呼吸筋の柔軟性や肺の伸縮性が低下してしまいます。それによって呼吸が浅くなったり、強い呼吸がし難くなる場合があるのです。

ではここから「腹圧・呼吸筋」や「猫背姿勢」の改善に焦点当てたトレーニング方法を紹介していきます。

 

呼吸トレーニング方法

呼吸トレーニングは胸や背中が伸びた姿勢の方がより効果が高まりやすい為、①→②の順番でトレーニングを実施してください。

【①猫背改善ストレッチ】
仰向け

  • 太く硬めに丸めたタオル(またはストレッチポーツやハーフポール)をみぞおちの高さで背中に入れて、背骨、胸を伸ばしていきます。
  • この時、手を上に挙げるとさらに効果的!
  • 5分程度行います。

うつ伏せ

  • 手を肩の真下に伸ばして上半身だけを上げ、背中を反っていきます。
  • 余裕がある方は天井を見るように顔を上げましょう。
  • 5分程度行います。

車椅子

  • 車椅子上での猫背改善トレーニングは下記の動画をご覧ください。

 

【②風船を使った腹圧、呼吸筋トレーニング】
風船

  • 100円均一などで販売している風船を使います。
  • 背中を伸ばした姿勢を作り、大きく息をすって胸を広げ下腹部を意識して風船を膨らませていきます。
  • 口で頑張りすぎずなるべく体幹や腹圧を意識して下さい。

ティッシュ

  • 顔から1m程度の距離にセットしてティッシュを息で揺らします。
  • 同様に下腹部を意識してなるべく長く息を吐きましょう。
  • 体幹の力で背中を伸ばす事が難しい場合は、背中に丸めたタオルを挟むと体幹を起こしやすいです。

さらに詳しい呼吸トレーニングの方法は以下の記事を参考に実施してみてください。
呼吸トレーニングについての記事はこちら

 

まとめ

  • 「ハンドリム」「アームサポート」「タイヤ」「ブレーキ」「ジョイスティック」のこまめな消毒
  • 高い位置にいる健常者からの飛沫防止
  • 呼吸筋の強化と猫背の改善で肺炎予防対策を
  • 呼吸トレーニングは胸の柔軟性と腹圧の強化をしよう

今回は「車椅子ユーザーが注意すべき感染経路や対策について」と「肺炎にならない、悪化させない為の呼吸トレーニング」についてお伝えしました。
車椅子は手での接触が多い為、定期的な消毒をしてできる限りの感染予防をしていきましょう。

参考文献

  1. Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1,2020 Mar 17,N Engl J Med 2020
  2. 車椅子・支援機器ユーザーのみなさまへ COVID-19の予防