みなさん、こんにちは。
今回のユニバーサルトレーニングセンターの記事では脊髄損傷者はどんな合併症で悩むことが多いの?
と言ったテーマで脊髄損傷者の長期的な健康状態を考えていきたいと思います。
脊髄損傷者と合併症
今回はこんな面白そうな論文を発見しましたので、この論文を元にお話をしたいと思います。
タイトルは
『SECONDARY HEALTH CONDITIONS AND QUALITY OF LIFE IN PERSONS LIVING WITH SPINAL CORD INJURY FOR AT LEAST TEN YEARS』
ですね。
これを訳すと、
『受傷後10年以上経過した脊髄損傷者の2次的健康状態(合併症)とQOLに関して』
といったところでしょうか?
脊髄損傷者は一体どんな合併症が多いのか?
そして、受傷からの年月が長くなるに連れてどんな合併症が緩和されていくか、またどんな合併症で悩む人が増えてくるのかを研究した文献になります。
このような観点では経験則での考察が多く、しっかりとまとめられた研究はほとんどないので、見つけた瞬間めちゃくちゃ興味をそそられてしまいました!笑
この研究のように、受傷後10年以上経っている人に注目した数が少なく、この論文の中でも受傷後10年以上の2次的健康状態とQOLの関係性をみた初めての国際的研究であると述べています!
オランダの研究ですが、被験者がN=282と300名近い脊髄損傷者からのデータをとったため、脊髄損傷の研究としては大規模となっています。
今回の研究のデータは、オランダの8つの脊損専門のリハビリ病院から集めたので多くデータを取れたようです。
オランダという小さい国土に脊損に特化した病院が8つもあるのも驚きですね。
それでは研究を見ていきましょう。
【対象者】
- 人数:282人
- 経過:脊髄損傷になってから10年以上経っている
- 年齢:28歳から65歳までの人(受傷時は18~35歳)かつ車椅子(電動、手動両方含む)を使っている人
【方法】
- 13個ある2次的健康状態に関して検査
- それらがQOL(生活の質)に与える影響の調査
- カウンセリングでの聞き取り
調査の結果
それではこの研究の結果です。
今回は問題形式で見ていきたいと思います!
是非みなさんも一緒に考えてみてください。
今回の合併症では以下のものが挙げられていますので、その中から答えを当てはめてみてください。
- 疼痛(筋肉or神経)
- 神経痛
- 痙性
- 異所性骨化
- 自律神経過反射
- 尿路感染
- 褥瘡
- 肺炎
- 起立性低血圧
- 便秘
- 排尿の問題
- 浮腫
では、
第一問:慢性期脊髄損傷にとって多い合併症とは??
- 筋肉からの疼痛
- 浮腫
- 神経痛
- 尿路感染
といった順位になりました。
やはり痛みで悩む人は多いのですね。
今回は痛みが神経と筋肉からの2種類に分けられていますが、痛みを一つにまとめてしまったら圧倒的に一番になりますね。
第二問:受傷暦が長くなるに連れて問題となる合併症は?
- 浮腫
- 疼痛(筋骨格系の痛み)
- 該当なし
これは意外に、浮腫が一番でした。
やはり、麻痺部の運動が減ってしまうのと、車椅子上での生活が長くなってしまうことが問題になっていますね。
第三問:受傷暦が長くなるにつれて少なくなってくる合併症は?
- AD(自律神経過反射)
- 肺炎
- 起立性低血圧
受傷から短い期間だと、自立神経過反射や低血圧などの症状に悩まされる方も多いと思いますが、今回の調査を見ると、これらの症状は比較的マネージメントできるようになっていくと言えるでしょう。
第四問:QOL(生活の質)に大きく影響してしまう合併症は?
- 痙性
- 褥瘡
- 便秘
- 低血圧
- 疼痛(筋骨格系の痛み)
これは圧倒的に褥瘡かと思いきや、痙性で悩んでいる人も多いですね。
痙性にはまずは運動が一番というデータもあります。
そして運動して、血流がよくなることで、褥瘡の予防にも繋がるので、
やはり根本的な問題には運動機会の減少というのが一つキーになっていますね。
またその症状に慣れてしまうことなどもあるので判断は難しいですが、
痛みがQOLに与える割合が他の症状より低いのは意外感じました。
以上が結果になります。
みなさんどうでしたでしょうか?イメージ通りでしたか?
この論文では、合併症の多くは予防できるものが多いので早期から十分な教育をしてマネージメントしていくことが重要であると述べています。
これを参考にしてみなさんの10年後の身体を少し考えてみてはどうでしょうか?
今から予防できるもの、しなくてはいけないものなどを考えてみましょう!!
参考文献
- Adriaansen, J., Ruijs, L., Koppenhagen, C., Asbeck, F., Snoek, G., Kuppevelt, D., . . . Post, M. (2016). Secondary health conditions and quality of life in persons living with spinal cord injury for at least ten years. Journal of Rehabilitation Medicine,48(10), 853-860. doi:10.2340/16501977-2166