車椅子ユーザーにとって「車椅子と身体が適合しているかどうか」は重要なポイントです。
多くの場合は病院を退院する前に採寸し、オリジナルの車椅子を作成する為、退院直後は身体に適合していて当然といえます。
しかし、いざ生活を初めてみるとクッションの変更や身体機能の変化が起こってきます。
その為、作成時の車椅子が適合しなくなってしまってる可能性があるのです。
そこで当記事では車椅子が身体に合っているかをチェックする為のポイントについてお伝えしていきます。
車椅子の部位名称がわからない方はこちらから先に見ていただくとこの記事の理解度が深まります。車椅子の部位名称クイズ!何問正解できますか?
目次
- 車椅子と身体の適合性チェック
- シート幅
- シートの奥行き
- アームサポートの高さ
- フットサポートの高さ
- バックレストの高さ
- まとめ
この記事は、理学療法士やアスレチックトレーナーとして障害者、車椅子ユーザーのリハビリ、トレーニング経験を多く持つ、障害者専門のパーソナルトレーナーが書いています。
車椅子と身体の適合性チェック
車椅子が身体に合っているかを測るポイントを以下の図を使ってご説明していきます。
「手を縦にした状態でお尻の両サイドに入る程度(2cm程度)」が適正とされています。
【シート幅が狭い】
- 座面シートが緩んでいる
車椅子の座面シートは徐々にバンドが緩みやすく、座面にわたみができる事で、左右の隙間が狭まります。 - 体重の増加
改善方法: 座面シートの緩みを直す、減量をするなどが考えれます。
【シート幅が広い】
- 体重の大幅な減少
作成時より体重が激減した場合は隙間が大きくなり、車椅子への収まりが悪く左右にお尻がズレる原因となります。 - もともと大きさが合っていない
車椅子には既製の大きさがあり、そこからあまりにも外れている場合、計測したにも関わらず少し大きくなってしまうという場合があります。
改善方法: 側面に高さがあるクッションにする事で、隙間を軽減させる事ができます。
チェックポイント2:両手でしっかり漕げるか
「片手ずつ交互に漕ぐ方が楽」「いつも交互に漕いでいる」とい方はシート幅が広すぎる可能性が高いです。車椅子を効率的に漕ぐには両手の力をタイヤにしっかり伝える必要がありますが、シート幅が広すぎると手とタイヤの距離が遠くなり、両手でしっかり漕ぐ事が難しくなってしまいます。
改善方法:車椅子自体を見直す必要があるかもしれません。
チェックポイント:座面シートから膝裏の距離
「座面シートと膝裏の間に4〜5cm隙間がある状態」が適正とされています。
【膝裏のに隙間がない】
- 膝裏とクッションがぶつかり、お尻を奥まで入れる事ができない為、ずっこけた姿勢(仙骨座り)になりやすい。
改善方法: お尻の後ろに3cm以上の隙間が空いている場合、バックサポート下面のバンドを締めて調整をしましょう。
また、座面シートよりクッションが大きい可能性もありますので、クッション自体の大きさもチェックしましょう。
【膝裏の隙間が広い】
座面から膝が出過ぎていると
- 足が開いてガニ股になったり、閉じすぎて膝と膝がぶつかる
- 足が左右に倒れて骨盤や腰が歪んでしまう
- 太ももで体重を支える面積が減り、お尻で支える圧が増える
改善方法: バックシートの下面にたわみを作って、少し奥まで座れるように調整をしてみてください。
また、クッションを変更することで座る面積の調整をする事ができます。
チェックポイント:肘を直角に曲げた高さ−2cm~0cm
「肘を直角に曲げた状態とアームサポートまでの距離、−2cm~0cm」が適正とされています。
【アームサポートが低い】
- 体幹筋が麻痺している方では肘で支える事ができず不安定になりやすい
- 肘をつくためにズッコケタ姿勢(仙骨座り)になってしまう
- 背中を丸め、猫背姿勢で肘をつく
【アームサポートが高い場合】
- 肘をつくと肩が上がってしまう
- 車椅子を漕ぐ時にハンドリムが遠くなり、タイヤに力を上手く伝える事ができない
- プッシュアップが大変になる
改善方法:クッションによって高さが変わる為、クッションを変更した際などはアームサポートと肘の距離に注意してみてください。
チェックポイント:座面とフットサポートの距離
「膝裏から足裏+クッションの厚みに合わせた長さ」または「フットサポートと地面の隙間5cm以上」が目安とされています。
【膝がお尻より高い(フットサポートが高い)】
- 重心が後ろに傾きやすい
- 車椅子を漕ぐ時に重心を前に移動させにくい
- 骨盤を起こした綺麗な姿勢がとりにくい
- 足が巻き込まれたり、落ちやすくなる
- お尻への圧が強くなってしまう
【膝が座面より低い(フットサポートが低い)】
- 足の重みで徐々にお尻が前方にズレ、ズッコケタ姿勢(仙骨座り)になりやすくなる
- 太ももの裏が圧迫されすぎて血流が悪くなる
改善方法:多くの車椅子はフットサポートの高さ調節が可能ですが、支柱と一体化している場合は座面の高さを変更するなどの対策が必要です。
また、足の高さもクッションの厚みで容易に変わってしまう為、フットサポートと座面の距離やしっかり足裏が設置しているかもチェックしてみてください。
*身体の大きさや足の長さによってはフットサポートを「かなり短く・長く」したい場合があります。その場合は後輪タイヤの位置を上下する必要があるため、車椅子専門の業者などへご相談ください。
チェックポイント:バックレストの最上部が肩甲骨より下
「バックレストの高さは基本的に肩甲骨より下」で設定し、あとは体幹の機能によって高さを決めていきます。
【体幹が安定しているのにバックレストが高い】
- 後ろに手を回しにくくなる
- 肩甲骨が当たり車椅子の操作を阻害する
- 寄りかかる事で体幹機能が衰える
【体幹が不安定なのにバックレストが低い】
- 車椅子を漕ぐ際に不安定となる
- 重心を後ろにして寄りかかれない為、前方へ倒れやすくなる
改善方法:バックレストは身体機能の変化に合わせて変更する事で、車椅子の漕ぎやすさが劇的に変わることもあります。
しかし、身体機能に見合った物でなければ逆効果の場合もある為、変更の際は注意が必要です。
まとめ
【車椅子の適合性チェックポイント】
- シート幅:左右2cm程度
- 座面シート:シートと膝裏の距離−5cm
- アームサポート:肘を直角に曲げた高さ−2cm~0cm
- フットサポート:膝裏から足裏+クッション
- バックレスト:肩甲骨より下
チェックポイント全てをしっかりと基準通りにしたほうが良いというわけではありません。
車椅子の種類によっては個別の調整ができない場合もあり、アームサポートに合わせてクッションを変えたら、フットサポートの高さが合わなくなったりなども考えられます。
そのため、チェックポイントから大きくズレている部分を直すだけでも、今より身体に合った車椅子となり漕ぎやすさや肩こりなどが解消されると思います。
特に「バックレスト」と「クッション」はネットでも購入でき手軽に変更できるため、ご自分で変更される方が多いですが、変更前に理学療法士やトレーナーからのアドバイスをもらうと良いでしょう。
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