増えるリハビリ難民を救うには?障害者の運動機会を創出する必要性

「リハビリ難民」
近年、この言葉を多く目にするようになりました。

2006年の診療報酬改定で「リハビリ日数制限」が導入されたことで、
維持期(慢性期)の患者・障害者はリハビリがかなり制限されました。

そのため機能回復や機能維持の為のリハビリや運動が十分に行えず、
入院中に獲得した機能や日常生活動作の低下を引き起こす結果となりました。
リハビリや運動をしたくても十分にできない、いわゆる「リハビリ難民」が生まれたわけです。

今回のユニバーサル トレーニングセンターの記事では
なぜ、リハビリ難民が増え続けるのか?そしてその解決策をお伝えしていきます。

病気によって入院できる期間が違う

みなさん、病気によって入院できる期間が異なることは知っていましたか!?
入院制限の日数は以下の通りになります。

脳血管疾患:180日

脳血管疾患とは主に脳梗塞、脳出血、脊髄損傷、パーキンソン病などが該当します。

運動器疾患:150日

運動器疾患とは主に関節の変性疾患、骨折などなどが該当します。

心大血管疾患:150日

心大血管疾患とは主に急性心筋梗塞などが該当します。

廃用症候群:120日

廃用症候群とは主に長期間動かず筋肉等が衰え日常生活能力が低下した状態などが該当します。

呼吸器疾患:90日

呼吸器疾患とは主に肺炎、無気肺などが該当します。

以上のように、上記日数を上限としてこれ以上入院できなくなる期間を示しています。
(*主治医の許可があれば延長が可能な場合もあり)
(*急性期、回復期、維持期で上記日数は大きく異なります。)

なぜ入院できる日数に制限があるのか

入院できる日数に制限があるのは
「医療の構造改革に関する基本方針」
というものが影響しています。

  1. 少子化が進む
  2. 医療費・年金など払う人(若者)が減る 
  3. 医療費・年金など使う人(高齢者)が増える 
  4. わが国の財政運営が破綻する
  5. どうしよう・・・

このように、少子化が進む日本では高齢者が増加し、医療を必要とする人が年々増え続けています。
それに伴い、病院はある程度ベッドを循環させておく必要があり、日数を制限せざるを得ないのでしょう。
しかし、その日数制限の結果リハビリ難民が生まれてしまうのです。

そうだ💡 病気になる患者さんを減らそう!!

少子化により需要と共有が破綻しつつある日本!
そして次々とやってくる入院患者・・・

政府は考えました・・・。

そうだ、病気になる人を減らす予防を推進しよう。

  • メタボリック・シンドロームの予防 
  • 骨折予防(転倒予防教室)
  • 認知症の予防
  • 脳血管疾患の予防

基本的にはこのような流れで近年予防医学の考えが推進されるよになってたようです。

「病気をいち早く直して退院してもらう」

という考えから

「そもそも病気にならないような健康活動を推進する」

という流れになりました。

入院中のリハビリにも限りがある

入院日数以外に入院中に受けられるリハビリにも制限があります。

リハビリは単位と言われるのもで行われます。
疾患別リハビリの所定単位は「20分1単位」で、1 単位ごとの点数が設定されています。
1人の患者に算定できるのは 「1日6単位」!!

特別に定められた患者には「1 日9単位」まで算定できるようです。
つまり、MAXで1日2時間〜3時間のリハビリをを受けることができ、これが上限となります。

この限られた時間の中で理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の方々が
自宅退院に向けたリハビリを提供しています。

早期退院を目指した集中的なリハビリ

入院費の削減を行うため、早期退院を目指し回復期リハビリテーション病棟にて
集中的なリハビリが受けられるようになりました。

脳血管疾患(脳梗塞、脊髄損傷、パーキンソンなど)では180日です。

しかし、この期間は在宅復帰するため、
最低限必要な日常生活動作を獲得するために必要だと見込まれている日数です。

リハビリ期間が終了し在宅復帰した後、
もっと上手に歩けるように
もっと手が使えるように
もっと立てるように
機能面の回復を行うには十分な期間とはいえません。

また、回復期を過ぎた後は慢性期に入り一気にリハビリが減ります。
そのため、患者の「もっと〇〇したい」に答えることができず、
退院日を迎え歯がゆい思いをしている医療スタッフは多くいます。

さらに、入院中に獲得した機能を維持したと思っている方にとっても、
退院後、急激に運動する機会が減少すれば機能低下が引き起こってしまうことは必然です。

増え続ける「リハビリ難民」

退院後のリハビリや運動場所として、多くは訪問リハビリ、外来リハビリ等が一般的だと思います。

しかし、両者もやりたいだけできるわけではありません。
これにも制限があります。

訪問リハビリ

介護保険の場合:週6回
医療保険の場合:週6単位(1単位20分)

*条件によって上記の限りではございません。

外来リハビリ

月に13単位(1単位は20分)を上限としています。
しかし、これも近年の改定で廃止される可能性が出てきています。

日数だけでなく、このようにリハビリ時間、単位の制限によっても、リハビリ難民が生まれてしまうのです。

まとめ

なぜ「リハビリ難民」が増え続けるのか

  • 近年、病気になった後より、病気になる前の健康維持に力をいれているから
  • 少子高齢化で需要と共有のバランスが崩れているから
  • 集中的なリハビリ後、急激にリハビリが受けられなくなるから
  • 訪問リハ、外来リハの時間だけでは十分な機能向上が難しいから
  • 患者の「もっと〇〇したい」にに答えられる場所が少ないから
  • 車椅子ユーザーが気軽に運動できる場所が少ないから

入院中に集的なリハビリが受けられるようになった一方で、
退院後のリハビリが激減するというギャップが生まれてしまいました。

もっと〇〇したい

我々は様々な障害を持った方々の機能回復に携わり180日どころか2、3年、10年と経過されている方でも、

何らかの変化が身体に起きる事実に出会ってきました。

今、リハビリや運動を必要としているあなた。
今後、病気にならないように今から運動しようと思っているあなた。
政府の打ち出した施策をどうのこうの言っても我々の力では変えられません。

しかし!!
我々は障がいを持った方の
「もっと〇〇したい」
「できるようになりたい」
に答えられるように、少しでも運動できる機会を提供していきたいと思います。

参考文献

  1. 平成30年度診療報酬改定の基本方針 厚生労働省
  2. リハビリテーションの標準的算定日数に関する関係団体への聞き取り調査について