【生活を脅かす褥瘡】車椅子ユーザーの褥瘡発生メカニズム

今回のユニバーサルトレーニングセンターの記事は車椅子ユーザーにとって生活を脅かしてしまう褥瘡(ジョクソウ)に関してです。

褥瘡に関してのベーシックな知識と予防策に関してですが、長くなってしまうので、基礎知識と予防策の2回に分けてご紹介いたします。

車椅子ユーザーによくある褥瘡とは?

褥瘡(ジョクソウ)とは一般的に「床ずれ」として知られていますが、日本褥瘡学会では以下のように定義しています。

身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。
この状況が一定時間持続されると、組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。

少し難しいので、わかり易く説明すると、

長時間同じ姿勢を保っていることで、身体と接地面が触れている場所に血流が行かなくなってしまい、皮膚が損傷してしまう状態です。

褥瘡は寝たきりの状態でも発生しますし、車椅子生活をしている事でも発生してしまいます。

ポイントは長時間同じ姿勢でいる」という事です。

皮膚が赤くなったり、皮がめくれるくらいとお思いがちな人もいるかもしれませんが
褥瘡はひどくなると筋肉を溶かしてしまったり、傷が骨まで届いてしまうこともあります。

そして入院、手術となり、長期間入院生活となってしまうこともありますので、決して侮ってはいけない合併症の一つです。

褥瘡の4段階

褥瘡の評価には様々な物がありますが、
今回は分かりやすいNPUAP分類と言われるの4段階をみていきましょう。

  • I 度:皮膚が赤くなっている状態。押しても白くならない。

  • II 度:傷口が開いたもの。水疱ができていたり、浅いクレーターのような状態。

  • III 度:傷口が深いクレーターの状態となり皮下組織まで広がってしまう。

  • IV 度:傷が、筋肉・腱・骨にまで達してしまう。

という4段階に分けられています。

I度がもっとも軽く、II度、III度になるに連れて重症化して行き、IV度になると傷口が壊死したり、身体に穴が出来てしまっている状態になります。

またそれだけでは収まらず、感染症に繋がる事もあり、時には命を脅かす恐れもあるので気をつけなければなりません。

注意したいのは表皮が赤くなっているI度の状態は表面だけが赤いのではなく、皮膚の下では血の巡りが悪くなっている為、もう既に、中の組織の損傷が始まっているということです。

なので、皮膚が赤くなっている状態を放っておいてしまうと、すぐに悪化してしまうのです。

皮膚が赤くなったらから注意しようではなく、そうなる前にケアしていかなければならないのです。

 

なぜ褥瘡は出来る?

なぜこのように褥瘡が発生し、傷口がひどくなってしまうのでしょうか?
褥瘡発生のメカニズムは大きく分けて5つあります。

  1. 感覚の麻痺

  2. 除圧や寝返りなど動作が出来ない

  3. 筋肉量の減少で骨が出っ張ってしまう

  4. 皮膚の摩擦や衛生状態の悪化

  5. 低栄養

1〜3は皮膚への直接的な圧の要因そして、4、5は皮膚の組織が弱くなってしまう要因です。

まず、メインのメカニズムである1〜3ですが、通常なら、長時間座ったり、寝たりしていると身体が痛みやしびれを感じて勝手に動かすことが出来ますが、障害による感覚麻痺の為、痛みや痺れを正確に感じることができません。

そして、脊髄損傷などの車椅子ユーザーは運動機能にも麻痺がある為、仮に何らかの異変を感じたとしても十分に体を動かすことができない為、圧をうまく逃してあげることが出来ないのです。

また同時に麻痺の為、筋肉量が現象してしまい、骨ばってしまうことで、ちょっとの圧でもすぐに皮膚が赤くなってしまいます。

また4、5の要因のように皮膚自体を健康的に保っておかなければ、少しの摩擦で出血し傷になってしまったり、傷の治りが悪くなってしまうのです。

それ以外にもむくみがある人や拘縮があり関節が伸びづらい方も褥瘡になりやすいので人並み以上に注意しなくてはなりません。

車椅子ユーザーの褥瘡はどこに出来やすい?

車椅子ユーザーにとっての褥瘡の好発部位は主に2つ「お尻」「かかと」です。

寝たきりの高齢者であれば、その他にも肩甲骨部分や肘にも出来やすかったりしますが、車椅子ユーザーにとってはこの2点がほとんどと言ってももいいでしょう。

そしてそのメインとなるのがお尻です。
お尻の部分の中でも尾骨や坐骨は特になりやすい場所ですので注意が必要です。

日常的に車椅子生活をしているとお尻とクッションと常に接地し、圧がかかっている状態となりますので、一番気をつけなくてはいけない場所となります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は褥瘡の基本的な知識に関してでした。

長時間同じ姿勢を維持していることで、体圧が一点に集中してしまい発生する褥瘡。

褥瘡発生のメカニズムは感覚の麻痺、除圧動作、筋肉量の減少による皮膚への直接的な圧、そして摩擦や衛生状況、低栄養による皮膚の弱体化による要因がメインとなります。

次回はこれらの知識を基に予防策についてお話していきたと思います。

是非参考にして頂いて、一緒に車椅子ユーザーの褥瘡0を目指していきましょう!

参考文献

  1. 日本褥瘡協会
  2. 褥瘡患者さんの為の栄養ケアポケットガイド 監修:美濃良夫先生 May 2013.
  3. 日本せきずい基金 You Can!〔増補改訂版〕第12章 褥瘡