前回のブログで筋ジストロフィーには色々な種類があると述べましたが、その中の一つである顔面上腕肩甲型筋ジストロフィー(FSHD: facioscapulohumeral muscular dystrophy)。
あるクライアントさんをきっかけに定期的に筋ジスの論文を読むようになったのですが、研究はいつも行き当たっている印象でした。
そんな中で去年発表されたこの論文を見つけた時はテンションが上がりました。
Safety and efficacy of a 6-month home-based exercise program in patients with facioscapulohumeral muscular dystrophy: A randomized controlled trial.
顔面上腕肩甲型筋ジストロフィー患者に対しての安全かつ効果的な6ヶ月の自宅エクササイズプログラム:ランダム化比較試験
顔面上腕肩甲型筋ジストロフィーは筋ジスの中でも比較的予後は良いとされていますが、ここまでエクササイズを安全かつ効果的と謳うほどの論文は初めて見ました。
現にこの論文でも、
”This study is the first clinical randomized controlled trial evaluating the safety and efficacy of combined aerobic, high- intensity interval and strength training on motor function, muscle histological and biochemical characteristics and quality of life over 24 weeks in FSHD patients. ”
と述べており、FSHDの患者を半年という長い期間でおったランダム化比較研究では初めての研究だと記してあります。
フランスの大学がメインで研究したものなのですが、ナイスフランス人!としか言いようにないですね!!
ここではこの研究でどんなことが行われたかざっと見てみましょう!
被験者: ランダムに振り分けられた18歳以上のFHSDでサイクリングが可能な被験者
(トレーニング群:男性5名、女性3名; コントロール群:男性8名、女性1名)
しっかりランダム化されていますし、ドロップアウトの経緯などもしっかり説明されているのでとても親切ですね。被験者数が少ないと感じるかもしれませんが、もともと患者数が少ない病態なのでこれだけ集めればいい方だと思います。
方法: 週に3回35分のバイクトレーニングを家で行う。そのうち2つのセッションは中くらいの強度(60%of aerobic power)とマックスに近い強度を組み合わせたもので、もう一つは40%と80%の強度を組み合わせたもの。
その中で重要視されていたのが、しっかり管理されているプログラムであるかどうかです。
最初の5〜10セッションは運動療法士が自宅まで行って監視しており、その後は電話と週一の訪問でしっかりとしたプログラムが行えているかどうかをしっかり監視しているのです。
結果:コントロール群と比較して、
最大酸素摂取量がプログラムを通してコンスタントに上昇(30%近く)、筋持久力増加(20%近く)、6分間歩行の距離増加(13%ほど)、疲労感の減少、などなど。ただ半年ではADLの変化はなかったとも書いてありました。
これはすごいことです!!今までは顔面上腕肩甲型においても他の筋ジストロフィーと一緒でトレーニングをすると筋肉が壊れて直せないから動かない方がいいかも。って感じだったのが、
理学療法として家での定期的な運動は推奨される!!
そして効果を最適化する為にも長期間のプログラムとして行われることが好ましい!!
と書かれているのです。
ここで行われたコンバインドトレーニングは筋のダメージなしに、機能回復を図れる安全なトレーニングだと証明されたのです。
これはFSHDの方々にとって大きな一歩になった論文に違いありません。
お近くにFSHDの患者さんがいらっしゃったら、動きましょう!動いて筋力増やしましょうと言えるのです!!
ただトレーニングは無理のない程度にしっかりトレーナーや理学療法士に監視されたものがベストであるのは間違いないのでお忘れなく。
こういった内容研究が他の筋ジスのタイプでも進んで発表されるといいんですけどねー。
これからも定期的に論文探してみます!!
- Bankolé, Landry-Cyrille et al. “Safety and Efficacy of a 6-Month Home-Based Exercise Program in Patients with Facioscapulohumeral Muscular Dystrophy: A Randomized Controlled Trial.” Ed. Xavier García-Massó. Medicine 95.31 (2016): e4497. PMC. Web. 5 Aug. 2017.