脳性まひの特徴や症状について理解したいに向けて、なるべく簡単に情報をまとめました。
脳性まひに関する多くの情報は「専門用語が多く、理解しがたい」といった状況にあります。
そこで当記事では脳性まひの症状や運動、リハビリの重要性をわかりやすくお伝えし、当事者やご家族様に少しでも有益な情報がお届けできたらと思います!
脳性まひとは?
脳性まひとはズバリ、「運動や姿勢に影響を与える一連の状態」を指しています。
定義は以下の通りです。
受胎から新生児期(生後4週間以内)までの間に生じた脳の非進行性病変に基づく、永続的なしかし変化しうる運動および姿勢の異常
・・・・・。
どちらも難しい言い方ですよね。でも上記のような言い回しの情報が多く存在するため理解に苦しむのです。
つまり脳性まひとは「脳」の「まひ」です。
脳に根本的な問題があり、それが体に何らかの影響を及ぼしている状態です。
人が体を動かす時には、脳から信号を送り目的の動作を行います。
しかし、「脳がまひ」すると信号がうまく伝わらず、思い通りに動作を行うことが難しくなり、この麻痺の程度によって障害の度合いが変わってきます。
また、基本的に脳性まひ自体の症状は進行しません。
時間が経つにつれて症状が進行する場合には「脳性まひに以外の問題」を疑う必要があります。
脳性まひに以外の問題とは?
基本的に脳性まひ自体の症状は進行しません。
しかし、以下のような脳性まひに付随する問題が原因で様々な症状が現れます。
- 精神遅延
- 学習障害
- 発作
- 視覚障害
- 聴覚障害
- 言語障害
などがありこれらを「合併症」と言います。
つまり「脳性まひ」+「合併症」+「合併症」のように、いくつくかの合併症が重なることもあります。
この合併する症状の進行や重症化に伴って徐々に身体が動かしにくくなったり、生活に支障を来す場合が多いです。
脳性まひの種類
脳性まひの主な種類は以下の3つです
- 痙性(ケイセイ)脳性まひ
- 運動障害性脳性まひ
- 運動失調性脳性まひ
それぞれについて説明していきます。
痙性脳性まひは70~80%の脳性まひ者に該当します。
*痙性(ケイセイ)とは?:無意識に起こる急激な筋収縮や筋肉の痙攣を示します。
- 両手、両足など左右とも症状がある場合は「痙性両側まひ」と言います。
- 身体の「片側」のみが影響を受けている場合は「痙性半側まひ」と言いい、脚よりも腕の症状が重いことがあります。
- 最も重症の脳性まひは、両手足と体が影響を受けている「痙性四肢まひ」で、しばしば口や舌を操る筋肉にも障害が現れます。
- 痙性四肢まひ(両手足のまひ)がある場合は、精神遅延やその他の問題も現れる事があります。
10~20%は運動障害性の脳性まひであり、全身が影響を受けます。
- 身体の動きが硬くなる、または軟かくなる。
- 時として動きが遅すぎ身もだえする、動きが急速すぎてぴくっとすることがある。
- 座る、歩くなど、体の動きをコントロールすることが難しくなる。
- 顔や舌の筋肉にも影響が出ることがあり、その場合には吸う、飲み込む、喋ることに障害が現れる。
5~10%の脳性まひ者は運動失調性の脳性まひです。
- 身体のバランスに影響が出る。
- 歩きが不安定で、字を書くなど、正確な動作を必要とする動きが難しい。
- 妊娠中および出産時に、脳の正常な成長を妨げて発生することがある。
脳性まひの特徴的な症状分類
痙直型脳性まひ | アテト-ゼ型脳性まひ | |
自発運動 | 緩慢、動こうとしない 動くことを好まない |
たえず動いている 手足の動きがバラバラ |
姿勢異常 | 全体に硬い | 絶えず変動する |
筋の緊張 | 高い | 変動し睡眠中はリラックス |
変形・拘縮 | 起こりやすい | 通常は起こらない |
性質 | 内向的で受け身 | 外向的なことが多い |
知能の障害 | 障害の程度は様々 | 高度には障害されない |
脳性まひの常識・非常識?
脳性まひの運動、リハビリについてはみなさん頭を悩ませていることでしょう。
ここではよくある質問に対して、文献を参考に回答していきます。
1. 姿勢が悪いままの歩かせすぎは良くない?
医学的な証拠はないようです。
むしろ歩かない事による筋力低下や関節の変形が増悪する可能性があります。
日常では、「正しい歩かせ方」よりも「安全性」を重視し、歩く時間を確保することが大切です。
そして悪い癖がついたら、その癖を管理、正すのがセラピストの役割です。
2. 立位や座位姿勢は背骨の湾曲が進む?
むしろ同じ姿勢で寝ていたり、じっとしていると常に同じ方向に重力を受け、変形が悪化します。ですので、いろいろな姿勢を経験する必要があります。
3. リハビリに通っていれば機能の維持、向上ができる?
リハビリの時だけでは限界があります。
むしろリハビリで行なったトレーニングを親御さんが日常で実践することが最も重要です。
また関節の変形に関しても日常の姿勢管理が重要となります。
4. 割り座は股関節脱臼を悪くする?
股関節の動きを確保するために、あぐら、割り座両方とも必要となります。
5. 重症児でも立位、歩行練習は必要か?
立位・歩行ができるようになるという目標よりも、それらの動作を行うことで、支持(介助)立位や自発的な移動を促すことができるため、安全を確保した状態で積極的に行う事が望ましいです。
6. 装具で固定して立つ理由は?
自力で立つことが難しい場合、足を装具で固定した状態で立つことがあります。
装具で立つことで、「首、体、足の支持性の維持・向上」、「呼吸が楽になる」、「脚の変形や骨密度の低下防止」、「脚の循環が改善される」などの効果がありあります。
7. 乳幼児期からリハビリは必要か?
背骨は真っ直ぐではなく4箇所で軽く曲がっています。
この背骨の反りは歩行や駆け足の際に衝撃が吸収されて、脊柱が折れないようにするためにとても重要な役割があります。
この骨を成長させるには運動による機械的な力(例.腱や靱帯の張力)が必要です。
ですので、早期からのリハビリはとても重要です。
まとめ
- 脳性まひとは「脳」が「まひ」した状態である
- 脳性まひは進行性ではなく、脳性まひ以外の問題が原因で様々な症状が現れる
- 生活では、「正しい歩かせ方」よりも「安全性」を重視
- 同じ姿勢を長時間行わない
- 装具で立つこと、乳幼児からのリハビリ、運動はとても重要
今回は脳性まひの基本的な部分と疑問についてお伝えしました。
筋力維持や変形の予防はトレーニングやリハビリの時間だけでなく、それぞれのご家庭でいかに実践していただくかが鍵になります。
脳性まひの症状やリハビリ、運動などの特徴に関して少しでもご理解いただけたら幸いです。
次回は、脳性まひに関してもう少し踏み込んだ内容をお届けしていきたいと思います。
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【参考文献】
- 脳性麻痺リハビリテーションとニューロリハビリテーション治療のハイブリッド化について: Jpn J Rehabil Med 2015 ; 52 : 605.608
- 脳性麻痺の部位別分類と類型分類:信州大学教育学部研究論集 第9号 2016年
- 脳性麻痺 リハビリテーション:Jpn J Rehabil Med 2016;53:359-364
- 脳性麻痺児におけリハビリテーションの実際ー運動機能を中心にー:Jpn J Rehabil Med 2017;54:449-454