脳性まひに対するリハビリや運動は研究が進んでおらず、ほとんど有効とされる方法が確立されていない現状にあります。

その中でも今回、脳性まひのタイプ別(痙直型・アテトーゼ型)で筋力、筋断面積、動作速度について検討した文献を見つけた為、我々が実際にトレーニングしている感覚と共に「どのような運動方法が有効なのか」ご紹介していきたいと思います。

目次

  • 脳性まひの種類
  • 脳性まひの研究紹介
  • 痙直型とアテトーゼ型の違いと運動方法
  • 実際のトレーニング指導を通して感じる事とポイント
  • まとめ

この記事は、理学療法士やアスレチックトレーナーとして障害者、車椅子ユーザーのリハビリ、トレーニング経験を多く持つ、障害者専門のパーソナルトレーナーが書いています。

脳性まひの種類

脳性まひには大きく分けて5つの種類があります。

  • アテトーゼ型
  • 痙直型
  • 固縮型
  • 失調型
  • 混合型

この中で「アテトーゼ型」と「痙直型」がほとんどの割合を占めています。

今回はアテトーゼ型と痙直型の運動方法についての内容になります。

それぞれの詳しい症状や状態はこちらをご覧ください。「脳性まひ」の症状と運動、リハビリの重要性

脳性まひの研究紹介

 

まずは今回、参考にした文献からご紹介いたします。
タイトルは「脳性麻痺のタイプ別筋力トレーニングに関する研究 」です。

研究内容は脳性まひ者を「痙直型」と「アテトーゼ型」に分類し筋力、筋断面積、動作速度について測定し、それぞれに適したトレーニングや運動を考察するといったものです。

【対象者】

  • 痙直型:20名、平均年齢26.2歳
  • アテトーゼ型:10名、平均年齢30.8歳。

【方法】

  • 股関節と膝の曲げ伸ばしの筋力・速度を測定。
    (腸腰筋、大臀筋、大腿四頭筋、ハムストリングス)

【結果】

  • それぞれのタイプで苦手な動作や筋肉の使い方に違いがあった。
  • その為、タイプに適した運動を行う事が効果的だという事がわかった。

参考にした研究の概要はこのような内容となります。
それでは次に痙直型とアテトーゼ型でどのような違いがあるのかご説明していきます。

 

痙直型とアテトーゼ型の違い

痙直型脳性まひ

【特徴】

  • 早い速度の運動が難しい。
  • 主働筋と拮抗筋を分けて運動することが困難。(大腿四頭筋とハムストリングスを個別に筋トレするなど)

【運動のポイント】

  • 例えば大腿四頭筋を鍛えようと膝を伸ばす運動を行う場合、本来なら緩むはずのハムストリングスにも力が入ってしまう為、動作を滑らかに行う事が難しくなります。
    その為、筋の単独収縮ではなく、多くの筋肉を同時に使うような運動が有効と考えます。
  • 早い動作が苦手な為、ゆっくりと負荷をかける運動が有効で、筋力が上がる事で早い動作にも対応できるようになります。

【例えばこんな運動がおすすめ】

  • スクワット
  • プランク
スクワットやプランクなど一度にたくさんの筋肉を使う動作や姿勢をキープするような、ゆっくりとした運動での筋トレや運動がおすすめです。

 

アテトーゼ型脳性まひ

【特徴】

  • 過剰に力を入れてしまい、力のコントロールが難しい。
  • 主働筋と拮抗筋を分けて運動できる。

【運動のポイント】

  • 過剰に力が入ってしまうが、筋肉を個別に使ってトレーニングする事が可能な為、健常者と同様に筋トレが可能になります。
  • 意図した運動とは別に手足が勝手に動いてしまう事がある為、目的の動作に対して力の入れ方が合っているか見極め、フォードバックを行います。

【例えばこんな運動がおすすめ】

  • チューブやダンベル運動
  • エアロバイク

個別に筋肉を動かせる為、チューブやダンベルを使った一つの筋肉を単独でトレーニングが可能です。
また、エアロバイクなど連続した運動を長く正確に行う運動もおすすめです。

トレーニングを通して感じる事

ここからは我々が実際に痙直型の脳性まひの方へ運動を行っている経験を元に、ポイントをお伝えしていきます。

研究でも紹介されていた通り、痙直型の方は筋肉を個別に動かす事が少し難しいように感じます。
また同じ動作を連続すると動きが拙劣になってきたり、うまく力が入らなくなったりする傾向にあります。
そして、生まれてから経験した事がない運動や身体の動かし方はイメージが難しく、簡単ではないように感じます。

【脳性まひへのリハビリ、運動ポイントのまとめ】

・変形予防

・筋緊張の調整

・不良姿勢の改善

・運動量の確保

・筋力増強

大きく分けて上記の5つになると感じています。

脳性まひ者は筋緊張の左右差や生活の癖から身体の歪みが生じている事が多く、この歪みを改善するだけでも動作が大きく向上する事があります。
さらに、もっと重要な事は姿勢の改善だけでなく、運動量の確保や筋力の増強を同時に優先した方が効率的に動作改善につながる経験があります。

姿勢や歪みを完全に修正する事が難しい場合も多い為、ある程度の筋緊張や歪みを持った中でも動きやすい方法や動ける体を作っていく事も有効かなと思います。
また、生活動作に関しても本人のやりやすい方法が既に身についている場合は、強制的に修正せず「容認すべきところ」「修正すべきところ」の見極めが大切であると感じます。

脳性まひの場合、障害の程度に大きな差がありご紹介した運動方法が全ての方に当てはまるわけではない為、今回の運動は少しでも立つ、歩く事ができる方向けに有効な方法になります。

*車いすやベッドでの生活が多い方には環境を設定し筋緊張が上がらない姿勢や変形の予防が優先されます。

まとめ

脳性まひの方へタイプ別のおすすめ運動と注意点

  • 痙直型はゆっくりとしたスクワットなどの複合運動
  • アテトーゼ型は正しい動作のフィードバックや個別筋への筋トレ
  • 無理な姿勢改善や動作の修正は逆効果の場合もある
  • 正しい動作や姿勢の改善+「運動の量」と「筋量を落とさない」事が大切

今回は脳性まひの運動方法に関して、痙直型とアテトーゼ型では運動のやり方を工夫した方が効果的だという研究を元にその違いをご紹介しました。

脳性まひを担当されるセラピストだけでなく、当事者の方も自主トレの参考にしてみてください。