リハビリテーションの現場において歩行ロボットが導入される施設やHALなどのロボットリハビリ専門の施設が増えてきています。

その背景には理学療法士のマンパワーの問題や一対一のリハビリの限界があると感じます。
これまでのリハビリテーションは限られた入院期間の中で日常生活動作を獲得し再び家庭復帰するという流れでした。

しかし、近年のロボット産業の発達に伴い立位や歩行訓練をロボットが手助けし、日常生活動作の獲得だけでなく「歩く」にフォーカスを置いたリハビリの時間が多く展開されるようになってきたように感じます。
そこで、今回は脊髄損傷に対する歩行ロボット用いた研究論文を元に最近の動向についてまとめてみました。

【設置型】歩行リハビリロボットの種類と特徴

ロボットスーツ HAL


*4,出典:株式会社光インベストメント:CYBERDYNE目標株引き下げ、HAL導入病院数予想を下方修正

歩行ロボットリハビリといえば一番に思い当たるのがHALではないでしょうか。画像のような設置タイプと装着タイプの2通りがあります。HAL最大の特徴は電気信号を読み取ってパワーユニットをコントロールしているところです。
例えば「歩くために足を前に出したい」と思うことで、脳から筋肉に電気信号が送られます。その電気を機械が読み取ることで歩行時のステップをサポートしてくれます。
以下の3つの制御システムが働いています。

  • サイバニック随意制御:使用者の歩きたいと思う意思(電気信号)を読み取りステップを制御する
  • サイバニック自立制御:電気信号がうまく伝わらなくても正しい運動に導いたり、プログラムに基づいた足の動きをしてくれる
  • サイバニックインピーダンス制御:違和感の軽減や関節運動をスムーズにしてくれる

日本では2016年1月に筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、シャルコー・マリー・トゥース病、封入体筋炎、遠位型ミオパチー、筋ジストロフィー、先天性ミオパチーの8疾患を対象として保険適用となりました。
電気信号を読み取る感度が年々グレードアップされ、見た目には筋収縮がない人でも、HALが使える場合が多いようです。

 

Lokomat (ロコマット)


*1,出典:Hocoma AG:ホームページ

これはでの歩行ロボットは介助者が両足を永続的にサポートし続ける必要があった為、ロコマットは脊髄損傷者を対象に足の振り出しを完全自動化するために開発されました。
日本では唯一、国立リハビリテーションセンターが所有している一台だけでハーネスで身体を釣り上げ免荷量を調整しコンピューター制御によって、歩行時の正常な関節運動を促し、歩行パターンをリズミカルに繰り返し行える特徴があります。
実際に見学した事があるが、人の手では不可能な速度や時間、リズムで繰り返し正しい歩行リズムが刻めるため、非常に効率的な歩行運動を繰り返す事ができると感じました。

 

Welwalk


*2,出典:トヨタ自動車株式会社:パートナーロボットWelwalk ww-1000仕様

Welwalkの特徴はズバリ「学習」です。目の前のモニターに映し出される自分の歩く姿を見ながら、歩行を修正できる特徴があり、正面と側面から歩く姿を確認できます。また音声案内で麻痺側の荷重量や膝折れの警告をしてくれます。このようにWelwalkは正しい動作と間違った動作を随時フィードバックしてくれるため使用者がしっかりと考え修正しながら効率的な歩行が行えます。
脳卒中片麻痺を主な対象に開発されてきた経緯から、今のところは脊髄損傷例は対象としていないようです。

 

Gait Trainer

*3,出典:株式会社モリトー:productinformationリハビリ用リフト

Gait Trainerは他の設置型歩行リハビリロボットと比べてハーネスを装着し免荷するだけであり装着が簡便である利点があります。一方で足を自力で動かすことが出来ない場合は、両足のステップをサポートする必要があるため、セラピストのサポートが必須となる特徴があります。
私も実際にトレーニングで使用した事がありますが、長くても5分でサポート側の手が疲労してくるため、連続して行う事が出来ない、またスピードが4.0kmを超えると足のサポートが追いつかないなどサポートの力量でパフォーマンスが変わってくる印象です。

【装着型】歩行リハビリロボットの種類と特徴

Honda 歩行アシスト

*5,出典:本田技術工業株式会社:HONDA歩行アシスト,歩行アシストとは

他の歩行ロボットと比べ小さく、腰と太ももにつけるだけで着脱が簡便な利点があります。
Honda 歩行アシストは自力で歩ける人が対象で、手元の端末で股関節の屈伸の角度やスピードを調整することで、それぞれの特徴に合わせたサポートを選択できることが魅力です。
実際に使った感想は歩行時のステップサポートをタブレットでリアルタイムに調整できる所が魅力に感じました。一方で約2.7kgという重さが対象者によっては重く感じたり、重さを支える事で逆に歩きにくくなってしまう場合もあると感じました。

 

WPAL (Wearable Power‒Assist Locomotor)

*6,出典:有限会社カネキデザイン商会:ホームページ

WPALは唯一、車椅子と併用できる歩行ロボットで車椅子からの立ち座りをサポートしてくれる機能があります。大腿、下腿、足首と計6つのモーターがあり、それぞれが歩行のタイミングに合わせ制御することで健常者の歩行に近いパターンを作り出せる特等があります。適応基準は身長150cm-180cm、体重80kg以下の完全麻痺者になります。
対麻痺など上半身が安定している方や手の力で体を支える事ができる方が適応になります。

歩行ロボットリハビリのメリット・デメリット

メリット

  • 繰り返し何回も連続歩行が可能
  • セッティングさえしてしまえば、サポートが一人でも実施が可能
  • 平行棒で歩くより運動量を増やしたり、正しい歩行パターンが身につく
  • 疾患や状態に合わせて歩行ロボットを選択できる
  • 自力で足を動かせなくても歩行ロボットが代わりに動かしてくれたり、サポートしてくれる
  • 定量的な評価が可能

デメリット

  • 施設によって保有している機械が異なるため、その施設にある物しか使えない
  • まだまだ動きが拙劣だったり、途中で止まったりする
  • セッティングに時間がかかる為、専門の施設でなければ使う機会が少ない
  • 上半身の機能が安定している人向けのものが多く、四肢麻痺などでは使える機器が限られる

歩行ロボットリハビリの将来性

歩行ロボットリハビリは近年、様々な種類が開発され、精度の向上や脊髄損傷者、脳卒中などターゲットを絞った専用の歩行ロボットリハビリも生まれてきています。
以前、紹介した脊髄損傷の歩行ロボットリハビリからの進化として、軽量化や装着の簡便さ、適応疾患が増えるなどアップデートされている部分があります。
こちら

しかし、まだまだ気軽に歩行ロボットリハビリが行えるわけではなく、ロコマットであれば国内に1台のみ、多くの機械はセッティングに時間がかかり、上半身で支える事を前提とした物が多い印象です。歩行ロボット自体の精度や軽量化、簡便な装着といった所がクリアされてくれば、リハビリの現場で頻回に使用されるようになると考えます。

今後は様々な「モノ」が「インターネット」に接続される(IOT)事により相互に制御し合う社会になって来るでしょう。
その結果AIが歩行ロボットにも搭載される事で、AIが自動的に最適な歩行を生み出す設定をしてくてたり、セラピストによる技術、知識、経験の違いというものが限りなく少なくできると考えます。

まとめ

近年のロボットリハビリの分野は技術の発達に伴って急激な進歩と市場が拡大し、多くの病院や施設でロボットを使ったリハビリが展開されると考えます。
しかし、個々の疾患に合わせた対応や筋肉の硬さ、痙性の強弱、痛みの状態などを把握しながら最適なトレーニングを行えるのかと言ったら先に話になりそうです。
このような身体の些細な変化や個別性を感じ取る部分はまだまだ人がロボットに負けない部分です。

今回、紹介した歩行ロボットは疾患や状態によって使用制限があるため、ロボットリハビリを検討されている方の参考になれば幸いです。
今後もさらに進化していく分野のため、定期的に最新の情報や動向をまとめていきたいと思います。

参考文献 

  1. 松元秀次,脊髄損傷に対するロボットを用いたリハビリテーション医療,Spinal Surgery33(2)132‒140,2019

画像出典元

*1. Hocoma AG,Lokomat,https://www.hocoma.com/solutions/lokomat/
*2. トヨタ自動車株式会社,パートナーロボットWelwalk ww-1000仕様http://www.toyota.co.jp/robotics/welwalk/spec/
*3. 株式会社モリトー,リハビリ用リフト,http://www.moritoh.co.jp/products/sp-1000/
*4. 株式会社光インベストメント,メルトレ,Market News,CYBERDYNE目標株引き下げ、HAL導入病院数予想を下方修正,https://www.cyberdyne.jp/services/RoboCare.html
*5. 本田技術工業株式会社,HONDA歩行アシスト,歩行アシストとは,https://www.honda.co.jp/walking-assist/about/
*6. 有限会社カネキデザイン商会,WPALOct.2016,http://www.kanekidesign.com/project-2016wpal.html