皆さん知っていましたか!?
車椅子ユーザーにおける健康の指標や評価方法を健常者と一緒にしてはいけない事を!

その代表的な例がBMI(ボディーマスインデックス)です。

BMIに関しては以前の記事でもご紹介しましたのでこちらをご参照くさい。

今回は脊髄損傷者のBMIに関する研究や医学的観点を踏まえながら、車椅子ユーザーはなぜダイエットをしても太りやすくて、痩せにくいのかといった点と、どうしたら運動の効果を最大限に発揮できるのかを深掘りして行きたいと思います。

車椅子ユーザーが痩せにくい原因

はじめに「なぜ車椅子ユーザーはダイエットしても痩せにくいのか?」という話から入ります。

車椅子ユーザーの多くは健常者と比べて日常の運動量が圧倒的に少ないことが非常に重要な要因だと言えます。(偏に車椅子ユーザーだからと言って全員が痩せにくいわけではありませんし、障害の種別や程度によっても変わってきます。)
つまり運動によって消費する、消費エネルギー量が少ないからです。
これは皆さんもご存知だと思います。

大事なのは次です!

日常の活動量以外に「車椅子ユーザー」と「健康者」で違う部分と言えば上半身や体幹、特に足の筋肉が使えるか、使えないかといった部分です。
例えば脊髄損傷であればダメージを受けた脊髄から下の筋肉が麻痺して使いにくくなります。
そのため、使える筋肉が健常者と比べて圧倒的に少ないんです!
筋肉量が減ることで筋肉がインスリンに反応しにくくなるという話なのですが、この辺は後で詳しくご説明致します。

ここまでをまとめると

  • 車椅子生活によって日常の活動量が減る
  • 身体全体で使える筋肉量が少なくなっている

大きくこの2つが消費エネルギー量を低下させて、痩せにくい身体になっている原因と言えます。

脊髄損傷者の約8割は糖尿病予備軍の可能性

ある研究で脊髄損傷の方々は明らかに糖尿病ではないにも関わらず、糖を食べて調べる検査をした所「約8割の人たちに耐糖能異常が見つかった」という内容です。

この研究を詳しくみていきましょう。
某病院の105人の脊髄損傷者で、明らかに糖尿病ではないという人たちに、経口糖負荷試験を実施しました。
経口糖負荷試とは簡単に言うと「糖を食べた後のインスリンの反応を見る検査」です。
因みに105人の脊髄損傷者は空腹時の血糖値は正常範囲だったそうです。
一般的に人間ドックや健康診断で検査するのは「空腹時血糖」です。
しかし、今回の研究では糖を食べた時のインスリンの反応を見る検査において、約8割の人たちにインスリンの働きが悪いという結果になりました。

そのため研究者の方はこう述べています。

健常者でも耐糖能異常がある人は30歳以上の方で40%から50%くらいと、依然よりだいぶ増えています。脊髄損傷の方はさらに、健常の方の2倍の頻度とかなり多いので注意しなければいけません。

これまでをまとめると
脊髄損傷者の多くは、普通の健康診断では糖尿病と診断されないが、実は体内に取り込んだ糖を処理する能力が低下している人が約8割いる
そして取り込んだ糖の処理が不十分だと、糖を体内に溜め込みやすくなってしまうのです

脊髄損傷者の理想のBMIは19前後

皆さんご存知ですか、そもそも標準体重の基準とは何を元に計算されているのかを。
それを測ることができるのがBMI(ボデーマスインデックス)です。
これは体重を身長の2乗で割った数値です。

BMI=体重(kg)/身長の二乗 (m)

私で言えば身長170cmなので1.7を2乗にします。
1.7m×1.7m=2.89m
この2.89mを体重から割ります。
63kg÷2.89m=21.7
ですので私のBMIは21.7ということになりますが、皆さんはいかがでしたか。

そしてこの数値がどうなのかという話なのですが。
世界的に体重と病気の関係性はある程度判明しており、BMIが22の時が最も病気になりにくいと言われています。
なのでこの22という数値を目指してください。
と言いたいところなのですが、先ほどお伝えした脊髄損傷の方は健常者と比べ2倍の頻度で耐糖能異常が見つかったという話が重要です。

車椅子ユーザーや脊髄損傷などは麻痺によって体幹や足の筋肉が使えなくなる事で、筋肉量が低下しています。
これが原因で糖を蓄えやすくなったり、消費エネルギー量が減ることでお腹に脂肪が溜まっていきます。
つまり、車椅子ユーザーや脊髄損傷者では健常者と同様の評価基準で測ってはいけないのです。

この図は105人の脊髄損傷者のデータで、黒い点がその一人一人のデータを表しています。
横軸がBMI、縦軸が腹部内臓脂肪を示しており、二つの相関関係を見たものです。

この図から何が読み取れるかというと、

  • 黄色いハイライト部分が一般の健常者の正常範囲の値
  • 青いラインが今回の研究で提唱されているボーダーライン
  • 緑の横線(100)は内臓脂肪面積のボーダーライン
    (内臓脂肪が100㎠以上あると生活習慣病になりやすくなる)

いかかでしょうか、多くの脊髄損傷者が緑の横線の100㎠のボーダーを超えていることがわかると思います。
そして重要なのが、ピンクでハイライトしてある部分です。
ピンクでハイライトした人たちは健康の指標であるBMI22という数値で区切ると多くの人が緑のボーダーラインを超えてしまっています。
つまり、脊髄損傷者の多くは内臓脂肪が蓄積しているにも関わらず、BMI22で判断すると隠れ肥満を見逃してしまうということです。
この研究結果から、脊髄損傷者のBMIの理想を19前後にしたほうがいいと提唱しています。

19前後という数値を見たとき、個人的にはなかなか厳しい数値だなと感じました。
BMIはあくまで肥満のを簡易的に測る指標のため、内臓脂肪や筋肉量と照らし合わせる事も必要になります。

使える部分を鍛えるだけでは痩せにくい理由

車椅子ユーザーや身体に麻痺がある方に関しては、使える部分だけを鍛えても痩せにくいという特徴があります。
車椅子ユーザーの中には麻痺してない「使える筋肉」を鍛えている方はある程度いらっしゃると思います。
しかし、麻痺している部分を動かすトレーニングをしている方はどれくらいいるでしょうか?
例えば上半身(使える部分)のトレーニングだけでは圧倒的に使用している筋肉量が少ないのです。

そのため、筋肉がインスリンに反応しにくくなり、取り込んだ「糖」を十分に処理仕切れない状態になっている可能性があります。
つまりこの糖が処理できないという事はダイエットに取り組んでも太りやすく、痩せにくい身体になっているということです。

でも、なかなか麻痺部を動かすのって一人では難しいですよね。
そこで使える部分(上半身など)はご自身でトレーニングしていただき、麻痺筋に関してはサポートしてもらいながら同時にトレーニングすることが効率的だと言えます。

このように麻痺部を含めた全身をトータルしてトレーニングすることができる、これが健常者を対象としたパーソナルトレーナーと我々、障害者を専門としたパーソナルトレーナーの違いだと考えています。

まとめ

車椅子ユーザー、例えば脊髄損傷者などでは、健常者と比べ日常のエネルギー消費が活動量と筋肉量といった観点から低下しています。
それによってメタボリックリンドロームなどの「生活習慣病」に陥りやすいと考えられます。
加えて麻痺部位を動かさないことによって、ダイエットをしても太りやすく、痩せにくいという悪循環になっています。
これらの予防のためにはメタボリックシンドロームの主な原因である内臓脂肪蓄積を予防することが大切です。
そして、効率的に車椅子ユーザーがダイエットによって痩せるには、使える部分を鍛えることも大事ですが、それと同時に麻痺筋もトレーニングすることが痩せやすく、太りにくい身体を作るのに必要なのです。
以上のことをまとめると

  • 車椅子ユーザーは運動量、筋量の関係から消費エネルギー量が低くなっている。
  • 使用する筋肉量が少ないためダイエットをしても痩せにくいという特徴がある。
  • 使える部分だけでなく麻痺部や身体全体を運動することで、ダイエットの効果を上げることができる。
  • 車椅子ユーザーはBMI評価をそのまま鵜呑みにしてはいけない、特に脊髄損傷者はBMI19前後を目安にする。

ここまで記事を読んでいただき、「なぜ車椅子ユーザーがダイエットによって痩せにくいのか」ということがご理解いただけたら幸いです。

せっかくダイエットするなら効果的に行いたいですよね。
この記事を読んでご自身の身体を見直すきっかけにしていただけたらと思います。
また、一人で麻痺部を動かすことはなかなか難しいと思います。
そんな時は我々がサポートさせていただきますのでお気軽にご連絡ください!

参考文献

  1. 脊髄損傷者の内科的諸問題について』 -からだ全体を見つめよう-
  2. 長期脊髄損傷者における内臓脂肪蓄積肥満の機序と予防策の検討