みなさんこんにちは。
今回のユニバーサルトレーニングセンターの記事は
脊髄損傷者にとっての呼吸、そして呼吸トレーニングに関してです。
今回は少し長めなので、障害による呼吸麻痺とそれに対する対応策の2回の記事に分けてご紹介いたします。

多くの脊髄損傷者が正しい呼吸ができていない!?

少し喋っただけで息が上がってしまう。咳がうまくする事が出来ない。
などといった呼吸の問題で悩んでいる頸髄損傷者は多いでしょう。

頸髄損傷など、脊髄でも上位の損傷を負った方々にとっては
呼吸の問題はお馴染みでもありますが、実はそれだけではないんです。

実は頸髄損傷者以外にも多くの脊髄損傷者が「呼吸に関する筋肉をうまく使えていない」ことが多いのです。

それをご説明する前に、まず呼吸筋とその神経支配に関して簡単に見ていきましょう。

呼吸筋の神経支配

神経支配筋肉説明
C3-C5横隔膜お腹の中にある呼吸にとって一番重要な筋肉です
C3-C8斜角筋群首の脇についている細い筋肉です
C5-T1胸筋大胸筋は多くの方が知っていますが、小胸筋という小さい筋肉もあります
T1-T11肋間筋肋骨の間にある筋肉で、肋骨の動きをサポートしてくれます
T6-T12腹筋群腹筋運動でお馴染みの筋肉ですが、呼吸のサポートもしてくれます

ご覧のように例え、胸椎の下部の損傷であっても、
呼吸を補助する筋肉は通常通りに働いていない場合が多いのです。

そして、しっかり呼吸筋が働かないことで、
脊髄損傷者は低換気、無気肺、感染症、肺炎になりやすい状態になってしまいます。

損傷部位毎になりやすい呼吸の状態

次は損傷部に毎になりやすい呼吸の状態を見て行きましょう。

頸髄損傷

C1-C3を損傷した方は呼吸にとって一番重要な筋肉である横隔膜でさえ、動きに麻痺が出てしまいます。
その為、通常の呼吸だけでは十分に換気が行えず、
人工呼吸器を利用する事が多いです。

C4損傷の人は横隔膜が部分的に効かないことがありますが、
人工呼吸器は着けずに自立した呼吸を行うことができるようになってきます。

しかしながら、肺活量は通常の1/3程度にも下がってしまうとまで言われています。
また咳も十分に出来ません。
健常者の呼吸から3倍大変になる事を想像すると、
どれほど大変なのか容易に想像つくでしょう。

C5-C8の頸髄損傷では横隔膜がしっかり使えるようになってきます。
しかし、呼吸補助筋である斜角筋群と胸筋は十分に使えません。
このレベルでは部分的に胸筋の機能が残っているので、
いかに残存している呼吸補助筋を使える状態にしておくかが重要になってきます。

また、肋間筋や腹筋群は麻痺している為、
咳をする力はまだ弱い状態にあります。
このレベルでの肺活量は健常者の1/2~1/3程度と言われています。
また頸髄損傷で四肢麻痺になると、残気量以外の最大呼気量や一回の呼吸での換気量などといった全ての肺気量が下がってしまいます。

特に受傷後にはベッドでの長時間生活や怪我による痛み、
そして呼吸筋の疲労や麻痺性イレウス(腸が十分に機能しなくなること)による腹部の張り、
などなど様々な原因によって呼吸器の問題が生じやすい状態になってしまいます。

胸髄損傷

胸椎の損傷では、多くの場合、胸筋、斜角筋群、そして横隔膜はしっかりと使えます。
しかし、肋間筋と腹筋群は麻痺しています。
肺活量は通常に近くなり、咳も強くできるようになりますが、
肋間筋と腹筋群の強さに依存してしまいます。
そして、T12以下の損傷で、ようやく普通通りに呼吸できるようになります。
ここでようやく普通の呼吸ができる状態です。
頸髄損傷者と比べるとそんなに問題はないのかな。と思えますよね。

しかし、落とし穴はここにあります。

胸髄、腰髄損傷の方は頸髄損傷者と比較すると、呼吸筋のケアはあまり必要ないと考えがちですが、「車椅子生活が続くことによる原因」によって呼吸が邪魔されてしまう事は多くあるのです。

麻痺以外でも呼吸を邪魔する原因

麻痺による呼吸の妨げは防ぐことが難しい場合もありますが、それ以外にも呼吸を制限する原因があるのです。
それは以下の3つの原因によります。

  1. 体幹部の痙性
  2. 車椅子での姿勢
  3. 日常的な車椅子生活による上半身の硬さ

まず一つ目の体幹部の痙性ですが、受傷部位によって痙性が体幹部に入る事があります。
背中に痙性が入る人もいれば、腹部に表れる人もいます。
腹部が伸びる際にそれに反応して縮こまるように入ることもあるので、
自然に呼吸をして、腹部が動くことでお腹に痙性が入り、苦しくなる事があるのです。

二つ目の車椅子での姿勢では
体幹の筋肉の麻痺の為、車椅子上でまっすぐ座位保持をする事が難しいです。
その為、少し後ろに寄りかかりながら座位を保つ人も多いでしょう。
しかしながら、その姿勢が続いてしまうと自然と姿勢が丸まってしまい、呼吸を制限する原因となってしまうのです。

そして、三つ目は日常的な車椅子生活による上半身の硬さです。
車椅子生活ではバランスを取る際や、車椅子を漕ぐ事で、日常的に上半身の筋肉を多用してしまいます。
その為、上半身の筋肉が発達し、そしてどんどん硬くなってしまいます。
それによって本来呼吸に使えるはずの胸筋や肋間筋、斜角筋が使えなくなってしまいます。
呼吸に使える筋肉がしっかり使えなくなると、呼吸が浅くなったり、また姿勢がどんどん崩れていってしまうこともあるのです。

これらは脊髄損傷になり車椅子生活を送ることによって生じてしまう問題でありますが、しっかりケア、トレーニングする事でこれらの要因を最小限に抑える事ができるのです。

脊髄損傷者の呼吸のまとめ

いかがでしたでしょうか?
みなさん思い当たる節はあったでしょうか?
特に最後の上半身の硬さは多くの車椅子ユーザーが経験する事だと思います。

今回は脊髄損傷者の呼吸が制限されてしまう原因の紹介でしたが、次回はこの原因に対しての対処方法、トレーニング方法をご紹介していきたいと思います。
次回をお楽しみに!!

参考文献
  1. Respiratory: assessing and treating – Overview. (n.d.). Retrieved Aug 14, 2018, from http://www.elearnsci.org/
  2. 宇都宮明美: 体位と呼吸管理.人工呼吸. 27(1):64-67. 2010.