車椅子生活では太って見えなくても肥満に要注意

脊髄損傷者や車椅子ユーザーの肥満と健常者の肥満の違いに違いがある事をご存知でしょうか?
脊髄損傷者ではよく「脊損腹」と呼ばれる「お腹がポッコリ出た」状態になりやすい傾向があります。

当記事では車椅子生活になる事で起こる身体変化と肥満に関してお伝えしていきます

一般的な肥満とその評価方法

厚生労働省の平成27年国民健康・栄養調査報告によると、男性肥満割合は全体の28.4%であると報告されています。
さらに男性では40代になるとその割合が約36%まで増えるのです。1
これはおよそ3人に1人が肥満ということになります。

一方女性では全体肥満割合は18.7%まで下がります。
女性の場合は高齢になればなるほど肥満率が上がって24%ほどまで上がると報告されています。1
こちらは約4人に1人が肥満ですね。

みなさんどうでしょう?
思っているより肥満の割合が多いように感じませんか?
例えてみたら4人家族で誰か肥満っていうレベルですからね。

ではこの肥満はどの基準で肥満!肥満じゃない!と分類されているかというと・・・
ここでの評価基準はBMI(>25)を用いて測定しています。

BMIは健康診断などでも見かけますし、おなじみになってきたのではないでしょうか?
BMI(ボディマス指数)はBody Mass Indexの略で体重割る身長の2乗で求められます。
計算式にすると以下の通りですね。

BMI = 体重(kg)  ÷  {身長(m) x 身長(m)}

この数値が25以上だと肥満とされます。

肥満とは体脂肪が過剰に蓄積している状態、お腹ぷよぷよ脂肪いっぱいの状態です。こうなってしまうと生活習慣病が引き起こされてしまいます。

でも、よくありがちだし気をつけてれば大丈夫!なんて思っていませんでしょうか?

見た目は痩せていても実は肥満かもしれない!?

ここからが本題です。

車椅子生活をしている人は健常者と同じ基準で考えていいものなのでしょうか?
車椅子生活になると

  1. 全身の活動量が低下。
  2. 車椅子に乗っているので足を動かさなくなる。
  3. 足を動かさないので足の筋肉がなくなってしまいます。
    (運動麻痺があれば麻痺部分はさらに筋肉量が減ってしまいます)
  4. 筋肉量が減ると基礎代謝が落ちて
  5. 脂肪量増加にまっしぐら!!
という一連の身体変化が起こりやすい傾向にあり、筋量の低下と脂肪量の増加は一見、外見からは肥満のようには見えにくいという問題があります。

脊髄損傷者を例にとると、
脊髄損傷者の肥満を判断するには従来型のBMIでは的確な判断ができないとされており、

「BMIのカットオフ値を下げることで肥満をより評価しやすくなる」2

「SCI肥満者の心血管障害のリスク判断するにはBMIよりウエスト周囲径がいい」3

などといった車椅子ユーザーの肥満の判断を的確にすべく、色々な研究がされているのです。

車椅子のパラスポーツをしている選手では、上半身がムキムキの人は沢山いらっしゃいます。
すごい筋肉付いているなーと思うかもしれませんが、実は身体全体で見てみると意外に肥満と分類されることもあるのです。

これは実は長年の車椅子生活で、下肢の筋肉量が極端に落ち、また下肢脂肪量が増加してしまっているからです。

上肢トレーニングは心肺機能の向上させることはできるが、全身対組成を変化させるには十分なデータを示せていない。などの研究もあるほど。
その為、上半身だけをガツガツ鍛えていて麻痺部の下肢に対してのケアが全くないと、脂肪量が驚くほど増えている!?なんてことにもなりかねません。

ですので、車椅子ユーザーが肥満を防ぐには、きちんとした食事と運動(特に全身運動)が必須になるのです。
特に、全身で筋肉量が多くある下肢の運動がとても重要になります!

みなさん、車椅子肥満から脱却するために、ユニバーサルトレーニングセンターで足のケアや運動をはじめてみませんか!?

 

参考文献
  1. 厚生労働省 国民健康・栄養調査(平成27年)http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html
  2. Laughton, G E, et al. “Lowering body mass index cutoffs better identifies obese persons with spinal cord injury.” Spinal Cord, vol. 47, no. 10, July 2009, pp. 757–762., doi:10.1038/sc.2009.33. Accessed 28 Aug. 2017.
  3.  Ravensbergen, Henrike (Rianne) Joanna Cornelie, Scott Alexander Lear, and Victoria Elizabeth Claydon. “Waist Circumference Is the Best Index for Obesity-Related Cardiovascular Disease Risk in Individuals with Spinal Cord Injury.” Journal of Neurotrauma 31.3 (2014): 292–300. PMC. Web. 27 Aug. 2017.