脊髄損傷者に対しての歩行補助ロボットの比較とまとめ

今回のユニバーサルトレーニングセンターの記事は
脊髄損傷者のリハビリ現場で登場するロボットに関してになります。

再生医療の発展と共に期待されるのがこのリハビリロボットですよね!
実はこのリハビリロボットと一口に言っても、実用的なものからかなり大掛かりな装置まで様々あるのです。

最近リハビリにおけるロボットの現状や研究などを色々聞かれる機会もあったので、
今回は歩行補助サポートの為に開発されたロボットに関してまとめてみました。

脊髄損傷者のリハビリに対しての歩行補助ロボット:システマティックレビュー

皆さん最近ではHALやRe-Walkなど様々なロボットでのリハビリを聞くようになったかと思います。
今回の研究では39の文献をレビューしておりました。

歩行補助ロボットの種類

ここではリハビリ現場で使われている12種類のロボットが紹介されていました。
そのロボットの中でもいくつかに分類分けできるのでジャンルごとに見ていきましょう。

 免荷式トレッドミル歩行補助

LokomatPRO (plus FreeD module)やLOPES などといった室内のトレッドミルに付随した歩行補助ロボットです。
このトレッドミル上でしか使用できないので、実用性はないですが、
従来の膝、股関節のサポートだけでなく、足関節の微妙な動きのサポートもしてくれるのでトレーニングとしてはもってこいですね。
日本にはなんと1台しかないそうです。

また、Welwalk WW-1000 というトヨタが開発した機器もあります。
これもトレッドミル上を歩く機器ですが、
重心移動や足のスイングなどといった歩行状態のフィードバック機能が付いていてとてもわかりやすくなっています。
まだ脳卒中の利用がほとんどではありますが、脊髄損傷での成果報告も期待したいですね。

 骨格補助タイプ

ARGO、EKSO、Indego、Re-Walk、WPALは屋内でも屋外でも使用可能な骨格を補助するタイプのロボットになります。
しかしながらこれらはクラッチや、歩行器を用いて歩行しくてはならず、
使用するには上肢の負荷が大きく、体幹の安定性もないとなかなかうまく歩行までいけません。

脊髄損傷でも胸損レベルの人はガンガン使いこなして実用もしていけるのでしょうが、
頸髄損傷レベルにはまだまだ難しいということですかね。
ARGOなんかは装着もすぐにできるので、実生活の中では他のロボットより使いやすいんじゃないかと思います。

 生体電位使用タイプ

HALやMindwalkerはEMGを用いて筋電を読み取り下肢の屈曲、伸展動作のサポートしてくれるロボットです。
HALは現在慶応大学でiPS細胞と組み合わせた臨床試験が行われているようですね。
一回のトレーニングセッションが60分。
それを週3〜5回やるようですが、
これは普段運動をしていない脊髄損傷者にとってはなかなかハード。
しかしながら、他の研究でも筋肉量の増加や骨密度の上昇などと行った体組成の変化としては十分なデータが出ているので、
このHALでのトレーニングを行うのはネガティブな方向に働くことはないでしょう。

 ブレイン・マシン・インタフェース

ブレイン・マシン・インタフェースとは脳と機械をつなぐ大掛かりな装置のロボットです。
その代表的なロボットがEXO。
この装置では上肢や体幹の筋力での支持が必要なく、
また歩行時の姿勢のコントロールも必要ないそうです。
その為、比較的重度な脊髄損傷の方でもチャレンジできそうですね。

と、様々なロボットを紹介してきました。

ここでの研究で多く報告されていた方法としては、週2-3回中強度での歩行訓練です。
そして、その研究結果として一番大きい影響を及ぼすとされているのは心肺機能の向上や代謝の変化でした。

脊損不全損傷ではmotor controlも上がる成果も出ていますが、
一番の原因は連続した動作パターンの入力による痙性の減少でしょう。
2次的な効果として温痛覚、振動覚、圧覚、反射の亢進、筋活動の向上などが報告されておりましたが、どれも個人差が大きいようです。

みなさんが興味があるところは結局どれが一番いいの?他のリハビリより効果的なの?
ってところだと思うのですが、これはまだまだ結論が出ていません。

現状ではそれぞれの用途に合わせてリハビリの器具として使ったり、補助具として使いこなすことが必要だったりします。
しかしながら、人力じゃできない活動量やサポートをできるといったロボットの特徴を考えると、きっとこれからリハビリ界に大きな革命を起こすことになるでしょう。

全てがロボット頼みになるというのはないとは思いますが、今後更にロボットの活用は増えてくると思います。
2018年も更に技術が進んで、少しでも脊髄損傷の患者さんがよくなる方法が確立されていくといいですね。

参考文献

Holanda, Ledycnarf J. et al. “Robotic Assisted Gait as a Tool for Rehabilitation of Individuals with Spinal Cord Injury: A Systematic Review.” Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation 14 (2017): 126. PMC. Web. 6 Jan. 2018.